「いきなり!ステーキ」一本足打法経営が、なんともビミョーに感じるワケスピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2020年07月07日 09時47分 公開
[窪田順生ITmedia]

社員に「連帯感」を持たせる

いきなり! ステーキ 単行本』(商業界、著・一瀬邦夫)

 では、そんな唯一無二の点呼カルチャーはいつから始まったのかというと、同じ社内報の中で一瀬社長ご自身が振り返ったところによれば、「この点呼を始めてから4〜5年経つ」という。つまり、「3年後離職率100%」の新人たちが入社したあたりから「点呼」という独特のカルチャーが誕生しているのだ。

 ここまで言えば、カンのいい方は筆者がなにを言わんとしているのか分かっていただけたのではないか。

 「いきなり!ステーキ」の店舗が急速に拡大していく中で当然、社員も急速に増えていく。「ペッパーランチ」を運営していたとき100人程度だった従業員は、400人、500人と急速に増えていった。このような”大所帯”になると、それまでやっていた一瀬社長の「個人商店」のようなマネジメントは通用しない。異なるキャリアや企業文化を経た中途社員のほうが古参社員よりも数が増えていくので、これがペッパーフードサービスで働くということだと社風を叩き込む教育が必要になってくる。

 そこで、一瀬社長が始めたのが「点呼」だった。が、テレビで放映されて炎上したことからも分かるように、今の時代にそのような高度経済成長期の企業戦士のようなノリは、どうしても「ブラック」に見えてしまう。以前から社長に仕えている古参の社員は文句も言わず、何度でも点呼するだろう。しかし、SNSでさまざまな情報を得て、ブラック企業という問題に敏感な若者世代はどうか。

 「もうついていけない、早めに辞めよう」――。そう思うのではないか。

 実際、この世代間ギャップがかなり深いのは、同じ社内報にある他の記述からもうかがえる。一瀬社長は今や900人を超える会社になったということで、「この社内報を全員に読んで欲しいとの思いから感想文の提出をルール化してきました」とサラリと述べている。しかし、就職活動をする学生にブラック企業の見極め方を教えるようなサイトの中には、社長の著作などの感想文を書かせて提出させるような会社は「ブラック企業」だと断定しているようなものもあるのだ。

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