米大統領選と経済と株価KAMIYAMA Reports(1/2 ページ)

» 2020年07月13日 17時10分 公開
[神山直樹日興アセットマネジメント]
日興アセットマネジメント

 共和党のトランプ氏(現大統領)と民主党のバイデン氏のどちらが大統領になっても、米国経済の成長率予想の差はほとんどないとみている。そもそもコロナ・ショックからの脱却において、政府や中央銀行のとるべき(とることが出来る)政策に大きな違いはない。また長期的に政策の差はあるが、経済成長全体に与える影響は小さいと見ている。

2020年米国大統領選挙に関する日程

 まずトランプ大統領が再選されたと仮定しよう。トランプ政権は、いまのところ、香港への国家安全維持法の適用に対して、中国本土への関税を引き上げる、香港での米ドル取引を大幅に制約する、といった米国経済にも悪影響を及ぼしそうな政策を避けている。

 コロナ・ショック前であれば、順調に成長する米国経済にとって中国への関税率引き上げはそれほど大きなショックをもたらさなかった。しかし、人々の行動を制限するロックダウンの影響で消費が蒸発した状態で、日用品を含む中国製品の関税引き上げは避けたいはずだ。また、民主党が下院を押さえたままのねじれ議会が続く可能性が高いので、議会の合意が必要な予算の変更なども簡単ではないだろう。

 通常、現職の続投は政策の予測可能性が高いことで市場に好まれるが、トランプ大統領は「予測されることで米国は損をしてきた」と考えているので、常に短文投稿サイトなどで不規則な発言をしてきた。発言の混乱が今後も続くことが予測可能というのは皮肉な結果といえる。いずれにせよ、トランプ大統領再選は、これまでと同じという意味で混乱が小さく、コロナ・ショックから経済を回復させることに集中するという意味で、成長率予想などが変化することはないだろう。

 一方、民主党のバイデン氏が大統領となった場合、同氏の政策セットの中にある「法人増税」が株式市場での懸念となっている。短期的にはコロナ・ショックからの回復に集中するので、いきなり増税からスタートする可能性は低い。

 長期的には、仮に法人増税を実現したとしても、増税分を負債圧縮に使うのではなく、社会保障や健康保険、学費補助などに使うのであれば、GDPの観点からは「分配が変わる」だけなので、消費者が貯蓄を増やさず安心して消費するならば、成長率が低下すると心配しすぎる必要はない。このことは、最終的に米国企業にとって売上げが増加することになり、日独などの輸出企業にとってチャンスが増える。“誰が成長するか”の違いがあっても、そもそも長期的に成長率予想が大きく変わるというほどには、共和党のトランプ氏と民主党のバイデン氏で違いはないと考える。

       1|2 次のページへ

© Nikko Asset Management Co., Ltd.