マックがコロナ禍でも好調なのは大手ファストフードだから? 公式アプリ「6600万ダウンロード」の本質飲食店を科学する(2/4 ページ)

» 2020年07月16日 05時00分 公開
[三ツ井創太郎ITmedia]

マクドナルドの顧客囲い込み戦略

 マクドナルドの業績を支えた大きな要素の1つに「自社アプリ会員」があります。皆さん、マクドナルドの公式アプリのダウンロード数はどれくらいあるかご存じでしょうか? 4月時点で累計6600万ダウンロードという桁違いの数を誇っています。各社によって集計方法などが違うので単純に比較はできませんが、丸亀製麺の公式アプリのダウンロード数は1000万となっています。

 さらに、マクドナルドでは新型コロナウイルスの感染拡大による影響を加味し、従来は別のアプリ取得が必要であった「モバイルオーダー」を4月にはいち早く通常アプリからも利用できるようにしています。

 モバイルオーダーを利用すると、来店する前に自宅でゆっくりとメニューを選ぶことが可能で、店頭では注文の列に並ばずスピーディーに商品を受け取れます。まさに「密回避」ができる機能となっているのです。コロナ禍におけるモバイルオーダーの戦略は見事に功を奏し、ファミリー層などが自宅で事前オーダーするという利用動機の拡大につながっています。

 実際にマクドナルドの2020年5月度における対前年比115%という実績を、飲食店の売上高公式である「客数」×「客単価」で分析すると、次のような数値が見えてきます。

<マクドナルドの2020年5月度対前年比の実績>

売上高:115%

客数:79.3%

客単価:145.3%

 客数は79.3%と落ち込んでいますが、客単価が145.3%と伸びています。これは家族利用などが増え、客数1人当たりのまとめ買い需要が拡大したことを意味しています。

 さらにアプリを分析すると、新型コロナウイルスの感染対策を紹介するコンテンツや、「おうち時間をもっと楽しく〜おやこでつくろう!こうさくマクドナルド」といったページもありました。これは、マクドナルドの袋やカップなどを使って、親子が自宅で工作をする方法を紹介しています。また、ページ内のリンクをクリックすると、YouTube動画による解説を視聴できます。ステイホーム期間中、この動画は多数再生されています。

 自社アプリでは、テレビコマーシャルなどと違って企業側が望む情報を顧客に大量に届けられます。これからの飲食店経営においては、顧客情報を取得した上で定期的に「お店の情報」=「価値」を発信するマーケティング戦略がとても重要になってきます。これは自社アプリを使わなくてもできることです。

 今まで多くの飲食店は、来店客の獲得をグルメサイトに頼ってきたのが実情でした。しかし、アフター・ウィズコロナの状況下では、集客効果が得られない状態となっています。

 緊急事態宣言が明け、外食をしようと思った際、今まで行ったことが無いお店をグルメサイトで検索して実際に足を運ぶ人はどの程度いるでしょうか? 恐らくその割合は少ないと思います。多くの人は、まずは自宅近くや以前に来店していた「なじみのお店」に行くのではないでしょうか。

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