マックがコロナ禍でも好調なのは大手ファストフードだから? 公式アプリ「6600万ダウンロード」の本質飲食店を科学する(3/4 ページ)

» 2020年07月16日 05時00分 公開
[三ツ井創太郎ITmedia]

江戸時代の商人から学ぶ顧客データの重要性

 「顧客データの獲得」というマーケティング戦略は、何も今に始まったことではありません。ここで先人の商売の知恵として「江戸の大火」のお話をさせて頂きます。江戸時代は火事が非常に多く、2〜3年に1度は大火事に見舞われる地域もありました。

 こうした中で店主は、火事が起きるとまず「顧客台帳」を持って逃げたそうです。高額な商品よりも顧客台帳を優先して持って逃げるのです。収束後、顧客台帳を見ながら「なじみ客」の自宅を訪ね、自身の無事と営業再開の報告をしていくのです。そこでなじみのお客さまが来店・購買をして下さり、少しずつ商売を復興させていったとのことです。

 さらに注目するべき点は「江戸時代には2〜3年ごとに大火を繰り返していた地域もあった」ことです。繰り返す経営危機下において「顧客台帳」を持っていない店舗は次々と廃業に追い込まれていったというのです。

 私はアフターコロナの時代においても「江戸の大火」の教訓は大いに役に立つと思っています。商売において最も重要なのは「なじみのお客さま」です。そして、なじみのお客さまに「自店のコンテンツ」=「価値情報」を迅速かつダイレクトに届けるためにも顧客台帳の存在が必須となります。

 そして、今後の顧客台帳はデジタルであることが重要です。私はこれらを総称して「デジタルアドレス」と呼んでいます。マクドナルドのような自社アプリは開発、導入、運用コストがかかるため、中小企業では導入が難しいのが実情です。

 中小企業でも有効なデジタルアドレスの例としては、「LINE公式アカウント(旧LINE@)」「メールアドレス」「SNS(Instagram、Twitter、Facebookなど)」「お客さまの携帯電話番号」などが挙げられます。

 個人情報保護法などには留意した上で、上記のようなデジタルアドレスをフル活用したWebマーケティングを実施していくことが重要です。こうした戦略は何も大手企業だけのものではありません。実際、当社のコンサルティング先でもWebマーケティングを実施したことで、コロナ禍においても売り上げが前年の実績を超えているお店があります。

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