「GoTo東京除外」でハシゴ外されたJAL、ANA 大手の破綻相次ぐ航空業界の悲鳴磯山友幸の「滅びる企業 生き残る企業」(2/3 ページ)

» 2020年07月22日 15時00分 公開
[磯山友幸ITmedia]

アリタリア・イタリア航空は国有化 解体縮小へ

 国からの支援を受けるルフトハンザ、エールフランスの両社は、経営再建に向けて、大幅なリストラを敢行する見込みだ。ルフトハンザは6月中旬、従業員の16%に当たる2万2000人が余剰になるとの見通しを明らかにし、労働組合との間で人員削減やワークシェアリングについての協議を始めた。

 エールフランスは7月に入って、22年末までにグループで7580人の人員削減を行う計画を発表した。航空需要が元の水準に戻るのは24年までは難しいという見通しを明らかにし、リストラが不可避だとした。

 両社の場合、政府からの資本注入は受けるものの、政府支援からの早期脱却を前提に、大規模な事業構造の見直しを行う。EU(欧州連合)は競争法で政府の出資を厳しく制限している。政府が支えることで、民間企業同士の競争を歪(ゆが)めることになるからだ。

 そんな中でも、国営化に踏み切ったところがある。イタリアの航空会社「アリタリア・イタリア航空」だ。新型コロナが蔓延する前から経営危機が続き、さまざまな経営再建策が模索された。エールフランスとの統合も計画されたが頓挫した経歴をもつ。そこに新型コロナが追い打ちをかける形になったのだ。イタリア政府は経営再建を断念し再国営化する方針を固めた。

 新型コロナウイルスは欧州では当初、イタリアが最悪の死者数を出すなど状況が悪化、ドイツなど周辺国との国境封鎖が行われた。このため、3月末時点でアリタリアが運行していたのは、ローマ発着とミラノ発着の週270便にとどまり、経営が事実上行き詰った。

 イタリア政府は当面の運行維持に向けて緊急融資に踏み切ったが、救済と引き換えに経営規模の大幅な縮小に踏み切る方針を打ち出している。経営を引き継ぐ新会社は「最小限の規模」からスタートするとしており、113機あった保有機を25機から30機まで減らす。ほとんどの長距離線の運行を取りやめ、近距離や中距離に絞り込むという。当然、これに伴って大幅な人員削減も行うことになる。現在1万1000人いる従業員を3000人にすることを検討している。

 最盛期には185機を保有、2万人を超える従業員を抱えていたアリタリアは事実上、解体縮小される。これまでも欧州の航空会社は国境を超えた合従連衡などを進めてきた。新型コロナをきっかけに航空需要が大きく減るとなると、さらに再編が模索されることになるだろう。

 感染が拡大しているブラジルやメキシコなどの航空会社が米国の破産法11条を使った経営再建に早々と乗り出したのも、現状の規模のまま企業を維持することは困難と見て、事業構造の見直しに着手したといえる。新型コロナが終息してもすぐに需要が元に戻るとの見方は少なく、旅客需要が減るとなれば、早いうちにスリム化を進めた方が経営立て直すことが可能になると見ているわけだ。

phot LATAM チリ(ブラジルの航空最大手「LATAM航空グループ」ファミリー)の塗装(Wikipediaより)

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