航空需要の激減は日本も状況は同じだ。日本政府観光局(JNTO)の推計によると、日本を訪れた訪日外国人旅行者は、4月、5月、6月と3カ月連続で前年同月比99.9%減となった。完全に人の動きが「消えた」のである。
そうした中で、日本航空(JAL)も全日空(ANAホールディングス)も、4月以降、大幅な減便が続いている。飛んでいてもほとんど旅客がいないという状況が続いているのだ。観光庁の集計によると、主要旅行業者の5月の旅行取扱額は、前年同月に比べて98%も減少。まさに旅行需要が「消滅」していた。その最大の被害者がJALとANAと言ってもよい。
夏休みに向けて国内旅行の活発化に期待をかけていた。ところが東京を中心に新型コロナ感染者が増加しており、国内線需要の回復にもブレーキがかかった。一縷の望みとも言えた政府の「GoToキャンペーン」が、最後の最後で東京発着を対象から除外したのだ。東京から沖縄や北海道と言った人気観光地への夏休みの予約が入り始めていた矢先の突然の除外決定だっただけに、完全にハシゴを外される格好になった。
JALとANAが4月に発表した決算では、1-3月期はともに赤字を計上しているが、新型コロナによる運休が本格化したのは4月以降。8月にも発表する4−6月期決算は赤字額がさらに大きく拡大することが見込まれる。
両社とも金融機関からのコミットメントライン(融資枠)の確保などで資金調達しているものの、7−9月決算でも回復が見込めないとなると、事業規模の縮小や政府による救済といった話が浮上してくることになりそうだ。
磯山 友幸(いそやま・ともゆき)
経済ジャーナリスト。1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年に退社、独立。著書に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)、『「理」と「情」の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP )、『2022年、「働き方」はこうなる 』(PHPビジネス新書)、共著に『破天荒弁護士クボリ伝』(日経BP )などがある。
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