今回「景気後退認定」の根拠となる指数は、内閣府の景気動向指数研究会が公表する「景気動向指数」だ。今回は景気動向指数のうち内閣府が重視する「変動の大きさや量」を表すCI(コンポジット・インデックス)から確認したい。
今回確認するCI先行指数は、新設住宅着工床面積や新規求人数といった、景気に先行する代表的な11指数を合成した指数だ。図表は日経平均株価指数とCI先行指数を時系列で比較したものである。
これを見ると、1990年代に発生したバブル崩壊や、2000年代に発生したリーマンショックといった株価暴落の局面では、株価下落の前に景気動向指数の伸び率鈍化や腰折れが発生していることが分かる。
バブル崩壊の事例では、1988年5月からCIの伸び率が急激に鈍化しているにも関わらず、これまでの景気上昇のペースを上回るスピードで株価が伸びていた。
次に2008 年に発生したリーマンショック以降の世界金融危機についてみると、CI先行指数は株価暴落の2年以上前である06年5月の時点で既に天井をつけていた。さらに、景気に遅れて反映され、先行指数よりも確度が高い「CI遅行指数」も07年1月で天井をつけていたのだ。それにも関わらず、株価は半年以上も上げ続けた。
それでは足元の状況はどうだろうか。これをみると、景気動向指数は今年5月時点で78.4と、バブル崩壊による景気悪化がピークとなった1992年の11月に匹敵する悪化レベルであるとわかる。このまま第二波の影響が色濃く出てしまえば、ここ数十年の最低値72.2(世界金融危機)を上回る景気悪化が引き起こされる可能性がある。
バブル崩壊から現在まで、実に30余年の経験則を今回にも当てはまると仮定すれば、現状は「景気悪化に対して、日経平均株価がまだ反応していないだけ」とみることもできる。
ただし、CIの値を相対的にみると、既に歴史的にみて相当低い数値となっている。また、これまでの金融ショックの事例とコロナ禍が単純比較できることでないことも踏まえると、いまの株価水準が直ちに「危険である」と断定することもできない。いまは、コロナの第二波に警戒しつつ社会・経済の動向をさまざまな指標から見極めていく必要があるだろう。
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