政府の”景気後退宣言”から考える、コロナとバブル崩壊の意外な共通点古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)

» 2020年07月31日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]
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“景気後退”を実感するのは下半期から?

 厚生労働省が27日に発表した毎月勤労統計調査によれば、一般労働者の5月における現金給与は34万5758円と、前年同月比で2.8%のマイナスとなった。確かに、数値は減少を示しているが、所定給与は前年同月比で同程度だ。つまり、残業時間の削減による所定外給与が主要因であり、賃下げといった影響は出ていないことになる。コロナの影響を直接受けていない企業の従業員にとってはコロナ禍の影響はそれほど顕在化していないというところが実情だろう。

 しかし、そのような人々も、下半期以降はコロナ禍の影響を体感することになるのかもしれない。21日にはANAが、28日にはJALが来年度入社の新卒採用の中止を発表した。大手旅行会社のJTBは冬のボーナスを支給しないことを決定している。コロナ禍の影響をダイレクトに受けているはずであるこれらの企業でも、コロナ禍の景気悪化のスピードがあまりにも早かったことや予算等の関係で、実際の打ち手をとるまでに時間差が出ているのだ。

 そのため、今年の冬以降はこれら大手企業の動きに追従して中小企業でも給与カットやボーナス不支給といった対応策に乗り切る動きが出る可能性がある。それによって、景況感の悪化や、景気動向指数が一段と下落する可能性がある。

 共同通信社が19年3月に公表した当時の世論調査では、実に8割もの国民が景気回復について「実感がない」と回答していた。今回、18年10月から景気後退していたと認定されれば、政府はこの世論調査を追認するかたちとなる。

 アベノミクスによる景気回復が実感のないものであったとするならば、コロナ禍の景気後退も現状では「実感のない」ものであると思う人々もいるかもしれない。しかし、第二波の動向によっては、コロナの影響を直接受けない企業であっても景気後退を実感させられる展開となる恐れがある。今のうちに備えの一手を模索しておく必要があるだろう。

筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士

中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。

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