そして(4)は、TikTokの大量のユーザーが、大統領選挙でトランプの足を引っ張るようなことをするのではないかとの疑念だ。というのも、16年の大統領選では、FacebookやTwitterの大量のアカウントが悪用され、ロシアの諜報機関や協力する民間企業によって選挙結果に影響を与えるような工作が行われた。
11月の米大統領選では、中国共産党がTikTokを使い、同じような工作を仕掛けるかもしれないという懸念が米政府関係者の間で出ている。というのも、6月にすでに予兆は出ていた。
6月20日、オクラホマ州タルサで3カ月ぶりに大統領選に向けた遊説を再開したトランプは、イベントの数日前から、遊説の会場に入り切れないほどの申し込みが殺到しているとインタビューでうれしそうに語っていた。だが当日、会場は空席だらけだった。
実はこの裏には、TikTokなどのユーザーたちがトランプの遊説に参加するためのチケットを登録し、その上でわざと参加しないという動きがあった。反トランプの年配女性がトランプの遊説を台無しにしてしまおうとオンラインで呼びかけ、若者などを中心に“空”登録を行ったのである。若者たちは、TikTokなどを使ってその情報を拡散させ、トランプに恥をかかせることに成功した。
要は若者たちが、トランプの大統領選の重要局面で何らかの「妨害」をできてしまう可能性があることを示唆している。そしてその背後に中国政府による仕掛けが絡む可能性もある。
ちなみにそのTikTok勢力には、韓流ファンも多く関与していた。そんなことから、米国で若手政治家として著名なアレクサンドリア・オカシオ=コルテス民主党下院議員は、「Kポップのファンの貢献に感謝」とツイートしたくらいだ。
これはもはや、反トランプ勢力による選挙運動と言っても過言ではない。しかも、これほど政治でも影響力をもつようになったTikTokを、欧米とは価値観の違う中国のような国が裏で操作できる可能性があるとすれば、政府が警戒するのは当然だといえる。もっといえば、中国のルールで運営されている企業なら、米国政府がしかるべき規制を強いるなどコントロールするのも容易ではない。
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