支払いの際などに目につきやすい消費税が減税論争の的となっているが、口座に振り込まれる前に天引きされる費目については、メディアも国会議員も無頓着なのかもしれない。勤労者世代にとっての第二の税金とも呼ぶべき「社会保険料」について引下げないしは増額幅の縮小余地がないだろうか。
第二の税金とも呼ばれる社会保険料。その多くを占める医療費は、コロナ禍で実は減少している(写真提供:ゲッティイメージズ)
国立社会保障・人口問題研究所の「社会保障費用統計」によれば、社会保障給付に充てられる財源121.3兆円のうち、39.2兆円と3割程度を占めるのが「医療費」である。コロナ禍で一見、医療費は高騰しているイメージを抱く方もいるかもしれない。しかし、実際のところコロナ禍は医療費を減少させている。
社会保険診療報酬支払基金によれば、2020年4月の時点で医療費は前年同月比で10.2%減となっていた。コロナウィルスの感染を避けるために、不要不急の来院を控える動きがあったり、各種の感染対策によって、コロナウィルス以外の病気にかかる人数も減っていたりすることが要因として挙げられる。そうであるとすれば、足元でも未だコロナ禍終息の兆しが見えない20年は医療費が前年比で大幅に減少するとみられ、その分を社会保険料の負担軽減に充てることができるのではないか。
社会保険料は消費税と異なり、収入に応じて負担割合に傾斜がかかる費目である。消費税のように全員に一律で負担軽減を行えば、その効果は微々たるものになるかもしれない。しかし、所得が低下したり、所得が低いことでコロナ禍による影響を強く受ける国民に対しては軽減率を高め、コロナがビジネスチャンスとなり収入が増加したような高所得者には通常の料率で社会保険料を計算することで、より公平に支援を分配できるのではないだろうか。
ただし、この施策は消費税と異なり、年金で生活する高齢者が恩恵を得にくい。消費税の減税を支持する現役世代の声も少なくないことや、高齢者の支持が政局を左右する現状からすると、政治家にとっては高齢者の支持を得にくく、現役世代からもあまり声が挙がっていない社会保険料をわざわざ論点にするよりは、キャッチーな消費減税を話題とする方が立ち回りとしては賢いのかもしれない。
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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