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「景気後退認定」で露呈した“経済指標のタイムラグ”埋めるか 巨大市場となったオルタナティブデータ業界金脈は身近なところにある(2/3 ページ)

» 2020年08月07日 07時15分 公開
[森永康平ITmedia]

仮説を立て、検証できるデータを探す

 では、そもそも経済指標として注目されてこなかったオルタナティブデータを、どのように活用していくのか。1つの方法としては、ある一定の仮説を立てたうえで、その仮説を検証できるデータはないかを探すことから始まる。

 下図は所定外労働時間と鉱工業生産指数の推移を重ねたものだ。この期間、相関係数は0.83と高い相関関係が認められる。

phot 厚生労働省『毎月勤労統計調査』、経済産業省『鉱工業生産指数』を基にマネネ作成

 景気が良ければ、夜遅くまで仕事をする企業も増えるだろうし、その逆もしかりだ。そのように仮説を立てたときに、それをどのようにして検証するのか。夜に仕事をするということは、仕事をする場所では電気をつけていると考えられる。このようなシナリオを基に、夜間の衛星画像から夜間光データが使えるのではないかという発想へと変わっていく。

 下図はNASAの衛星画像だが、大都市ほど明るく、朝鮮半島では北朝鮮が真っ暗なことからも分かる通り、これだけでも経済活動と夜間光の関係性を読み解けそうな期待が持てる。

phot (出所)NASA Hyperwall, [Japan at Night], Released on July 28, 2014

 しかし、実際に計算をしようとすると難易度は高い。雲に月の光が反射しているケースもあれば、仮に夜間光が確認されたとしても、そこが何に使われている土地なのかによって、その場所における経済活動がどれほどの付加価値を生み出しているのかも変わってくる。

 そこで、同じ位置から撮影した画像を複数日重ね合わせて、雲が全くかかっていない状態の地形の画像データを認識したり、国⼟地理院が発表している⼟地利⽤調査を参照したりして、その土地が農地、商業⽤地、⼯業用地など、どのような用途で使われているかなどのデータも重ねて算出していく。そのように衛星画像から夜間光とその他のデータを掛け合わせることで、現在は3カ月に1度しか発表されないGDPをより短い間隔で推計することができるのだ。

 もう少し直感的に理解しやすいケースもある。例えば、衛星から撮影した石油タンクの画像から、石油タンクの蓋の高さを算出し、在庫がどれぐらいあるかを推測するのだ。

 石油タンクの天井は内部に貯蔵している石油が酸化しないように、落とし蓋のようになっていて、タンク内の石油の量に連動して上下する。この蓋の高さを衛星画像から石油の在庫量を算出し、その情報を投資家や商社に売ってマネタイズしている企業が既に存在している。

phot (出所)Orbital Insight

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