先進的な印象を持つオルタナティブデータにも欠点はある。まず、歴史が浅いことだ。信頼して使えるデータかどうかを検証できるだけの長期に渡る時系列データがない可能性もある。もう1つは、年を重ねるごとに技術が進歩していくことによって、取得できるデータ量や種類が増えることで、時系列で見たときにデータの内容が変化してしまい一貫性がなくなる場合もあるのだ。
取得コストが高いこともデメリットだ。衛星画像やPOSデータなど、分析をする基となるデータの入手自体にコストがかかる。加えて前述したように、そのデータを分析できるように加工するデータサイエンティストの数も多くないので人的なコストもかかってくる。そうなると、ビジネスとして民間企業がそのデータを永続的に提供し続けられるかどうかも危うくなる。
一貫して同じ手法で算出されたデータが長期間あることによって初めて意味を成すため、その担保をどのように設計するかも課題なのだ。
また、情報の種類によっては個人情報保護の観点や、インサイダー情報に該当するかなどの判断も求められるため、全てのデータがオルタナティブデータとして活用されるかどうかという点も今後は焦点となってくる。
これまでは伝統的な経済指標を基にさまざまな政策判断がなされてきたが、今後はこのようなオルタナティブデータも併せて参照されるようになることが期待される。速報性があり、更新頻度も高いオルタナティブデータが参照されれば、より実態に沿った政策が迅速にとられていくだろう。
森永康平(もりなが こうへい)
株式会社マネネCEO / 経済アナリスト。証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。その後はインドネシア、台湾、マレーシアなどアジア各国にて法人や新規事業を立ち上げ、各社のCEOおよび取締役を歴任。現在はキャッシュレス企業のCOOやAI企業のCFOも兼任している。日本証券アナリスト協会検定会員。著書に『MMTが日本を救う』(新書/宝島社)や、父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(新書/ KADOKAWA)がある。 Twitter:@KoheiMorinaga。
令和に入りつるべ落としに日本経済が傾く中で、MMT(現代貨幣理論)についての関心が高まっている。
本書は新進気鋭の経済アナリストがMMTの概論と、日本経済にどう用いると景気浮揚のカンフル剤になるのか、わかりやすく説明。
「モズラーの名刺」の逸話など、わかりやすい事例を用いて、MMTが前提とする話などを丁寧に記す。
消費増税の影響やコロナ不況など、一般層が経済政策を知る必要が出てきている今、専門用語や数式をほぼ使わずに、視覚的に理解できるグラフを多用してやさしく解説する。
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