「お金儲(もう)けは悪いことですか?」。かつて旧「村上ファンド」の代表を務め、「モノ言う株主」としても知られた村上世彰氏の有名な発言だ。
現在はシンガポールに住みながら、投資家としての活動を続けている同氏が5月、角川ドワンゴ学園が運営する通信制高校「N高等学校」(N高)が設立した「N高投資部」の特別顧問に就任した。
村上氏がN高投資部の特別顧問として生徒に伝え、教えたいことは何なのか。日本の金融教育についてどんな考え方をしているのか。その狙いについて、経済評論家の森永卓郎氏の長男で、ライターとしても活動している森永康平氏がインタビューした。森永氏は現在、金融教育事業などを手掛ける株式会社マネネのCEOも務めている。
村上氏は金融や投資に対してどんな哲学を持っているのか。現在の日本企業、経営者たちをどう見ているのか。また、最近話題になっている年金運用についてどう考えているのか。村上氏本人に直撃した。
―――今日はよろしくお願いします。N高投資部では数学や統計学を教えるそうですが、数学や統計学はあくまでも投資判断をする前の分析の基礎だと感じています。授業の中では投資判断に直接つながること、例えば「財務諸表の読み方」なども教えていくのでしょうか?
そこまではやりません。僕はどうやって完成させるかはどうでもよくて、それよりも子どもたちが、お金に近づいてほしいし、もっとお金に親しみを持ってほしいと思っています。
一番重要なことは、1年経った結果、どれだけお金に親しみを持ってくれたか。例えば、投資に参加した子どもたちが儲けたかどうかなんていうのは、どうでもいいんです。仮に失敗して損をしても、どういう感覚を持って次につなげられるか。これはN高とも話をして、同じ考え方だったので、「特別顧問」という立場を引き受けました。今回は学校という教育機関として実施する話ですから、子どもたちに対する教育としての意味がなければならないと思っています。
ということは……財務諸表なんて関係ないんですよ。「先生、財務諸表ってどう読むんですか?」と、生徒が知りたくなった時に初めて教えてあげればいい。「財務諸表とは……」と、黒板に書いて始めるような教育をしたくないんです。少なくとも、この投資教育において、そういう授業をやるなら僕は特別顧問を引き受けませんでした。
――授業を通して、生徒が効率的にお金を稼ぎたいと思い、その手段として財務分析をしたいんだ、となったら教えてあげますか?
投資で一番大事なのは感性です。今回の授業の中で、子どもに絶対にやってほしいのは、IR(投資家対応窓口)に一度は電話をかけるということ。相手がどのような思いで経営をしているのかを、直接自分の耳で聞くのが大切だと思っています。
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