“ファーウェイ排除”本格化で5Gの勢力図はどうなる? エリクソン、サムスンの動きとは世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

» 2020年09月17日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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5Gでシェア拡大を狙うサムスン

 米政府がファーウェイへの攻勢を強化する中、サムスンは19年に入ってから5G分野に3年間で220億ドル(約2兆4000億円)を投資すると発表している。そして20年までにシェアを20%にすると意気込んでいたが、現在はまだ13%ほどのシェアにとどまっており、残念ながらその目的は達成できていない。それでも、先行きは悪くないようだ。

 実は米政府が19年に最初に公式にファーウェイ排除に乗り出した後、筆者は米情報機関関係者への取材で、「ファーウェイは排除されるが、米情報機関でサムスンはOKだという判断が出ている」と聞いた。その当初から、米政府はファーウェイに代わってサムスンにも期待していたようだった。ただ人材確保などで苦労していたらしいが、5Gの特許取得件数はファーウェイに次いで2位につけている。

 そしてサムスンは9月7日、同社の5G事業にとって重要な発表をした。米ベライゾンとの約67億ドルの契約を発表したのである。25年までにベライゾンに5G機器などを提供することが明らかになった。これはサムスンにとって、5G分野での大躍進だと話題になった。ベライゾンとの契約を結んだことは、今後、世界的にも信用材料となるだけでなく、PR材料としても効果的だろう。さらなるシェア拡大の足掛かりになる可能性もある。

 ここまで見てきた通り、5Gは米中覇権争いからシェア争いにまで発展して、いまだにせめぎ合いは続いている。ただし、米国の動きでまた形勢が変わる可能性もあり、予断を許さない状況が続いているのも事実だ。

 次の重要な局面は米大統領選の結果。米国の対中強行路線はそう変わることはないだろうが、今後、どこがファーウェイを超えていくのか注目である。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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