菅内閣が誕生したことで、安倍政権の経済政策であるアベノミクスは一つの区切りを迎えた。アベノミクスによって日本経済は力強く成長したと言われているが、多くの国民はむしろ生活が苦しくなったと感じているはずだ。経済が成長しているのに、生活が苦しくなるというのは大きな矛盾だが、なぜこのような状況になってしまったのだろうか。このメカニズムが分かれば、次期政権の課題も明らかとなるだろう。
アベノミクスの期間中における日本経済の平均GDP(国内総生産)成長率は実質で0.9%だった(四半期ごとのGDPを基準に年率換算したもの)。当初、安倍氏は実質で2%程度の成長を実現すると明言していたので、現実にはその半分だったが、プラス成長していたのは事実である。
政権はプラス成長が続いたことを理由に、景気拡大は戦後最長に匹敵する長さだったと成果を強調している。それにもかかわらず、国民の生活実感が悪化しているのは、海外との取引が存在しているからである。
日本は資源がほとんど無く、貿易で国を成り立たせている。私たちが日頃、消費している製品のほとんどは輸入されたものであり、たとえ国内産でも原材料は外国から輸入しているケースがほとんどだ。そうなってくると、鎖国でもしない限り、諸外国の経済から影響を受けてしまう。
先ほど、アベノミクス下で日本は平均0.9%の成長を実現したと述べたが、同じ期間で先進諸外国は1.5%から2%の成長を実現しており、経済規模が拡大した分だけ世界の物価は上がっている。0.9%と2%で大きな違いがないように見えるがそうではない。例えば2%の成長が10年続いた場合、経済規模は1.2倍以上に拡大しているはずだが、0.9%では1.1倍に達しないので、10年で1割の差がついてしまう。
アベノミクスの期間中、賃金はあまり上昇しなかったため、収入が増えない中、輸入に頼る生活用品の価格が上昇し、生活が苦しくなった。
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