コロナ時代をどう戦う? IKEA、ニトリ、無印、それぞれの戦略巣ごもり需要で好調(5/5 ページ)

» 2020年09月28日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]
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IKEAは都心型店舗展開で若年層を開拓する

 IKEAの理念は「より快適な毎日を、より多くの方々に」というビジョンのもとで、「優れたデザインと機能性を兼ね備えたホームファニッシング製品を幅広く取りそろえ、より多くの方々にご購入いただけるようできる限り手ごろな価格でご提供すること」とあります。

 創業が通販からスタートしたこともあり、いかに低価格で顧客のもとに商品を届けるかを追求してきた会社です。従って、できるだけオペレーションを効率的に行い、無駄なコストを削減し、顧客に提供する商品の価格をできるだけ抑えることを良しとしています。家具の部品を平たく梱包した「フラットパック」方式で物流を効率化し、割安な価格で大量販売するビジネスモデルで成長してきたというのが同社の戦略の核となる部分です。結果的にローコストオペレーションの徹底につながり、比較的低い粗利率でもグループ全体で3000億円以上の経常利益を上げるまでに成長したのです。

 同時に、同社はSDGs(持続可能な開発目標)達成に取り組む最先端企業でもあります。気候変動対策分野に年間純利益の70%相当を投資(16年度実績)したり、使い捨てプラスチック用品販売の中止をいち早く決めたりするなど、環境保護に対して徹底した施策を実行している会社です。再生エネルギー分野への投資や家庭配送用トラックを30年までに100%電気自動車にすると宣言しています。この取り組みは他社にも大きな影響を与えています。

 店舗展開では同社は都心型小型店開発に乗り出しています。

 「生活費が高く、狭い家」という世界の都心部に居住する人たちのための住まい提案をするというのが一番の狙いです。特に東京ではこのような暮らし方をしている人が多いからです。

 売り場面積は約800坪弱。JR原宿駅前のビルの1階、2階を使って売り場を作っています。店内は「都市部の暮らしのニーズ」を基本にして売り場分類を作っているのが特徴です。

 「眠る」「整える」「くつろぐ」「料理する」をテーマに売り場を構成。その関連商品を集積して、全部で1万アイテムを品ぞろえしています。

 IKEAは、間取りにあわせた具体的な部屋のイメージを提案する売り場を作ります。「1人暮らし向け」「低価格で実現する部屋」「都会に住む30代のカップルの部屋」など10個以上の部屋を店内で提案しています。都心の若者の部屋を実際に調査して作り上げたコーナー展開のため、かなりリアリティーのある売り場で、多くの若者たちを引きつけています。今後、渋谷のセンター街にある、もともとForever21が出店していたビルに1500坪ほどの新規店舗を開店する予定です(20年冬)。郊外大型店ではファミリーを固定化し、都心小型店では若者を囲い込む。IKEAは高い環境意識をベースに、ファミリーと若者の固定化により世界でのブランド力をアップさせていく方針です。グローバルに成長する企業の戦略は、マクロにもミクロにも強いという印象です。

 家具・インテリア雑貨小売りという同じような業種企業でも、これからの生き方はまったく異なります。Withコロナを生き抜く経営としてどの企業が支持されていくのか。コロナ時代の小売り業界の先進事例として3社の動向に注目したいと思います。

著者プロフィール

岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)

ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント

 1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。

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