日本郵政の「謝罪キャンペーン」が、新たな不祥事の呼び水になると考える理由スピン経済の歩き方(6/6 ページ)

» 2020年10月06日 09時48分 公開
[窪田順生ITmedia]
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郵政にも「メス」を

 では、そんな厳しい現実を突きつけられて、全国20万人の郵便局員の士気は上がるだろうか。厳しいノルマが課せられリストラも始まるというのに、組織のムードだけはいまだに「役所」を引きずっている。経営陣も天下りばかりで、経営者らしいこともせずに総務大臣の顔色をうかがうばかり。民間企業になるんだと掲げながらも、選挙になると全国郵便局長会が「票田」として機能もすることもあって、ゴリゴリに政治が介入をしてくる。

 「あーあ、もうなんかバカバカしくてやってらんねえよ」とシラけて、郵便局の未来に絶望をしてしまう従業員が続出してもおかしくないのではないか。

 そんなカオスな日本郵政グループをつくってしまった原因は、さまざまな意見があるが、民主党政権時代に、民主、自民、公明の3党で提出された郵政民営化法改正のせいだという人もいる。小泉政権の郵政民営化から方針転換をしたもので、当時、下野していた自民党は民主に賛同してこの法案を通したが、「筋が違う」と反対をした骨のある議員もいた。

 その中の1人が、「パンケーキおじさん」こと菅義偉総理だ。小泉進次郎氏などともに「造反組」と呼ばれた菅総理は当時、地元紙にこんなことを言った。

 「党内を二分する大激論をし、郵政選挙で国民は(完全)民営化をしろという結論を出した。金融2社の完全民営化があいまいになり、賛成できなかった」(2012年4月13日 神奈川新聞)

 こんな志を持っていた菅総理は、今の日本郵政グループの体たらくをどう見ているのか。政府の介入や官僚の天下り、そして「2万4000のユニバーサルサービス維持」が裏目にしかでていないこの巨大組織の「民営化」をあきらめてしまったのか。

 地銀や中小企業の再編、行政の縦割り打破なども結構だが、「半民半官」の弊害がもはや限界まできたこの組織にも、ぜひメスを入れていただきたいものだ。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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