販売台数は前年比3倍! シャープの水なし自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック」開発者に聞く――共働き家庭の必需品に「時産家電」市場を狙う(2/3 ページ)

» 2020年10月20日 10時50分 公開
[中西享ITmedia]

便利な予約、自動調理

 共働きや子育ての必要な家庭は、朝夕は子どもの送り迎えなどで忙しい時間帯だ。それだけに料理にかける時間はできるだけ減らしたいところ。そこで今注目されているのが、家事を省力化し、新たな時間を作り出す「時産家電」で、それを実現させているのがホットクックの予約、自動調理機能だ。予約調理は、朝の出勤前の段階で食材を鍋に入れてできあがる時間をセットしておけば、帰宅したら料理は完成している。

 自動調理は、食材を切って調味料を加え、鍋に入れておきさえすれば自動的に調理してくれる。いわゆる「ほったらかし家電」の1つで、鍋の煮加減などを気にすることはなく、ほかの家事や子育てに時間を割くことができる。3人の子どもがいる栗原技師は「家族に手づくり料理を食べさせてあげたいが、仕事もしなければならない葛藤をしている働く女性に少しでも役立ちたい思いがあった」と話す。

 19年度までのホットクック購入者アンケートによると、ほぼ8割が週2日以上使用、25%はほぼ毎日使っているという。厚生労働省によると、18年の共働き世帯数は1219万世帯にまで増加、専業主婦世帯は毎年減少し600万世帯だ。コロナ禍で「ほったらかし家電」の代表ともいえる自動調理鍋は成長市場になっている。

phot 新型コロナの影響で家で調理する回数が増加。家事省力化にニーズが生まれている

価格以上の利用価値

 9月に発売したホットクックの新商品は、最近、ブームになっている低温調理も、ジッパー付き保存袋と、付属の蒸しトレイを使ってできるようになった。低温調理は肉類の場合、50度から65度程度を維持しながら1〜2時間も調理しなければならないため、難しいとされてきた。肉類は50度を超えるとタンパク質の変性が起きるため、肉が硬くなってしまいがちだった。

phot 低温調理の例
phot 低温調理の手順

 しかし、ホットクックを使えばきめ細かい温度管理が可能なため、簡単に低温調理ができる。さらに新商品では、鍋に汚れがこびりつきにくく、手入れが簡単なフッ素コート内鍋を新たに採用したため、料理の後片付けも楽になった。

 ただ、他社の自動電気鍋が3〜5万円程度なのと比較して、ホットクックは数万円高い。最新の2.4L(リットル)タイプは7万円もする。栗原技師は「価格が高いという声はよく聞いているが、ユーザーが価格に見合うだけの利用価値を認めてくれているから売れているのだと認識している」と指摘した。

 それを証明する実績数字も出ている。ホットクックの年間販売台数は、15年度は約3万台だったが、18年度は約6万台に伸び、19年度は前年度比約1.7倍の約10万台を記録、9月末には累計で30万台を達成したという。

phot 新商品では、鍋に汚れがこびりつきにくく、手入れが簡単なフッ素コート内鍋を新たに採用したため、料理の後片付けも楽になった

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.