新型iPhoneは、スマホ市場のマンネリを打破できるのか本田雅一の時事想々(4/4 ページ)

» 2020年10月22日 17時00分 公開
[本田雅一ITmedia]
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 A14 Bionicと名付けられているiPhone 12/12 Pro向けSoCは、アップルいわく「他のあらゆるスマートフォンよりCPU、GPUともに50%高速」と訴求する高性能チップだ。

 実機で試してみると、いつの間にか差がついていた。ベンチマークテスト上の数字ではあるが、インテルがパソコン用に開発した最新の第11世代Intel Coreプロセッサに匹敵するほどの数字が出ているからだ。

 同時期に出荷されるiPad Airにも同じSoCが使われているが、こちらは搭載機が大きいためGPU性能も最新パソコン級になっている。

 しかし、A14 Bionicの本当のすごみは、CPUやGPUといった従来の指標で推し量りやすい部分以外に、多くのリソースを投入している点だ。

 Neural Engine、MLアクセラレータといった、いわゆる機械学習処理やニューラルネットワーク処理に特化したプロセッサが、A13 Bionicに対してわずか1年で+70%という高性能化を果たしているのだ。

photo A14 Bionicにより「パワフルなコンピュテーショナルフォトグラフィーが実現し、デバイス上で直接写真やビデオをすばやく編集できる」という=アップルのニュースリリースより

 この部分は直接的にはカメラ機能として生かされている。具体的には、コンピュテーショナルフォトグラフィーと呼ばれる、演算によって写真を補正する技術に活用している。

 多数の画像フレームをバッファーし、画素を組み合わせることで画像の質や実効感度を高めるなどの処理はもちろん、複数露出のフレームを連続的に取り込みながら、広大なダイナミックレンジの情報を適切なトーンマップに割り付けるといったテクニックだ。

 これらはAR技術などでも応用可能で、またアプリのAI機能を高めるために、さまざまな形で開発者たちに応用するためのツールを提供している。iPhoneの一機能のための投資ではなく、将来的にはそこに新しいアプリケーションを呼び込みたいと考えているが、現時点ではまだ種まきにとどまっている。

成熟したiPhoneの再誕はなるのか

photo iPhone 12/12 mini=アップルの公式サイトより

 こうしたアップルの未来に向けた投資は、アップル自身がiPhoneという製品ジャンルの成熟を強く意識しているからだろう。積極的なデベロッパー支援を毎年打ち出し、いくつかの注目アプリは出ているものの、イノベーションを呼び起こすような存在はなかなか現れてこない。

 5Gだからどうしたというのだ。速くなるだけではないのか。

 スマートフォンは3G時代に発展した製品だ。5Gの特徴を生かすジャンルは他にあるに違いない。しかし一方で、高速大容量であることもまた事実。まずはそこへの接続性を確保し、その上で5G時代に見合うSoCを開発。ツールを整えることで、iPhoneそのもののさらなる変容を、アップルは呼び起こそうとしている。

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