「かつや」のシェアは60%も!? コロナ禍に負けず、とんかつ・かつ丼市場で圧倒的強さを誇る秘密とは飲食店を科学する(4/4 ページ)

» 2020年10月27日 05時00分 公開
[三ツ井創太郎ITmedia]
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今後の事業成長を分析する

 かつやにおける今後の事業成長性を考える上では、まずとんかつ・かつ丼の市場規模全体を見ていく必要があります。富士経済の調査によると、2019年度のとんかつ・かつ丼の国内における市場規模は670億円程度と推定されます。

 とんかつ・かつ丼市場は、かつやが前述したオートフライヤーを使って全国展開を始めたことから、他企業の参入も進み近年その規模が拡大してきました。

 ここで、市場規模を捉える上での1つの指標をご紹介します。それは「マーケットサイズ」という考え方です。これは、ある業界の市場規模(総売上)を日本の総人口で割ることで求められる指数であり、当社がコンサルティングご支援先企業さまの店舗展開シミュレーションを行う際にも使用する指数です。

 とんかつ・かつ丼の市場規模は670億円です。これを日本の総人口で割ると、国民1人当たり1年間でとんかつ・かつ丼に527円を使っている計算になります。つまり、とんかつ・かつ丼のマーケットサイズは527円です。

 この527円に商圏人口をかけることで、その商圏内におけるとんかつ・かつ丼の市場規模を算出できます。さらに、商圏内のかつやの年商規模から、同圏内におけるシェア率(市場占有率)を導き出せます。

 実際のコンサルティングの現場では、この数値に商圏特性や人口特性など、さまざまな変数も加味していきますが、ここでは分かりやすく「マーケットサイズ×商圏人口=商圏内市場規模」「店舗年商÷市場規模=シェア率」という方程式で説明していきます。

 なお、かつやの1店舗月商は、同社のフランチャイズ募集サイトなどを参考に800万円、年商は9600万円と仮定しました。

 かつやのとんかつ・かつ丼市場におけるシェア率を算出しました。すると、全国で60%近いシェアを獲得していることが分かりました。これは、圧倒的な優位性を誇る数字です。

 地域別に見ていくと、100億円程度の市場規模が見込める関西エリアなどでは、シェア率は40%程度です。また、九州エリアは24%程度です。チェーン店の全国展開においては、フランチャイジーの加盟や物件開発、生産体制、物流体制といったように、市場規模だけでは決定できない要素が多いのが実情です。しかし、定量データをみる限りでは、まだまだ店舗数を拡大することが可能だといえます。

 さらに、とんかつ・かつ丼業態のマーケットサイズは現状は527円程度ですが、牛丼チェーンのマーケットサイズは3200円です。とんかつ・かつ丼業態全体の市場が今後も成長する可能性は高いとも考えられます。

 コロナ禍の中でもM&Aをすることで、新たな事業基盤も取り入れた同社。今後の成長戦略に注目していきたいと思います。

 本記事が少しでも皆さまのご参考になれば幸いです。

 最後までお読み頂きありがとうございます。

ボリュームの多い持ち帰り弁当(出所:リリース)
ボリュームの多い期間限定商品(出所:リリース)

【20201030編集部注記】コスミックダイニングの冷凍食品事業に関する記述を一部修正しました。

著者プロフィール

三ツ井創太郎

株式会社スリーウェルマネジメント代表。数多くのテレビでのコメンテーターや新聞、雑誌等への執筆も手掛ける飲食店専門のコンサルタント。大学卒業と同時に東京の飲食企業にて料理長や店長などを歴任後、業態開発、FC本部構築などを10年以上経験。その後、東証一部上場のコンサルティング会社である株式会社船井総研に入社。飲食部門のチームリーダーとして中小企業から大手上場外食チェーンまで幅広いクライアントに対して経営支援を行う。2016年に飲食店に特化したコンサルティング会社である株式会社スリーウェルマネジメント設立。代表コンサルタントとして日本全国の飲食企業に経営支援を行う傍ら、日本フードビジネス経営協会の理事長として店長、幹部育成なども行っている。著書の「飲食店経営“人の問題”を解決する33の法則(DOBOOK)」はアマゾン外食本ランキングの1位を獲得。


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