ワタミ、ロイヤルHD、サイゼリヤ……外食チェーンが軒並み大赤字に転落 業態転換など急ぐ磯山友幸の「滅びる企業 生き残る企業」(2/3 ページ)

» 2020年10月28日 07時15分 公開
[磯山友幸ITmedia]

最もひどかったロイヤルHD

 吉野家HDの2021年2月期上期(2020年3月から8月)も売上高が23.4%減少、最終損益は57億円の赤字だった。吉野家HDは通期の見通しについて、売上高は20.3%減の1723億円、最終損益は90億円の赤字と見込んでいる。

 決算期のズレによって影響の出方はまちまちだが、最もひどかったのがロイヤルHDの2020年12月期上期決算。2020年1月から6月が対象で、新型コロナの影響をモロに受けた。売上高は40.8%減の405億円、最終赤字は131億円に達した。6月末現在の利益剰余金は25億円(1年前は167億円)にまで激減。本業からの現金の入りである「営業キャッシュフロー」と「投資キャッシュフロー」を合わせた「フリーキャッシュフロー」は155億円の赤字となり、280億円に達する長短借入金で補った。とりあえず期末の現金は127億円あるが、本業が戻らない限り、将来は厳しい。

 本決算を10月14日に発表した外食チェーンの「サイゼリヤ」の2020年8月期決算も、11年ぶりの赤字決算だった。新型コロナウイルスの蔓延による外出自粛などの影響で売上高が1268億円と前期比で19.0%減り、最終損益は34億5000万円の赤字(前期は49億8000万円の黒字)に転落した。

 上半期(2019年9月から2020年2月)はまだ新型コロナの影響がさほど出ておらず、売上高が前年同期比1.8%増を確保、純利益も22億4100万円の黒字を計上していた。それを全て吹き飛ばしてしまって大幅赤字になったわけだから、いかに3月以降の新型コロナの影響が猛烈だったかが分かる。

 上期の既存店の来客数は前年同期比0.6%減だったが、客単価が上昇、売上高は0.2%増だった。ところが、4月には客数が前年同月の38.7%にまで落ち込み、5月も47.6%にとどまった。7月以降、7割に戻ったものの、下期累計の客数は36.1%減少、売り上げも35.6%減った。結局、通期1年間の客数は1億8413万人と19.2%減少した。

phot サイゼリヤの客数(サイゼリヤの2020年8月期 決算説明会資料より)

 今後の見通しも厳しい。原価圧縮による損益分岐点の改善などを掲げるが、2021年8月期も上期は売上高が15.1%減る見込みで、23億円の最終赤字を見込む。下期は売り上げが回復、通期では1350億円と6.4%増を計画するものの、最終損益は36億円の赤字と、2期連続の赤字を見込む。

 サイゼリヤはここ数年、海外での新規出店を積極的に進めてきた。国内店舗数は4年前の2016年8月の1028店から2020年8月には1089店と6%増やしたが、海外は中国を中心に345店舗から428店に24%増やしてきた。経済成長が見込めるアジアでの事業拡大を急いできたわけだ。新型コロナで売り上げが急減する中で、損益分岐点を改善するためには投資の抑制が不可欠になる。

 2020年8月期も本業からの現金収入である「営業キャッシュフロー」は5億2500万円の黒字と、ほぼトントンを維持したが、設備投資などに出ていった「投資キャッシュフロー」は59億円の赤字となり、短期借入金など「財務キャッシュフロー」で補わざるを得なかった。会社側は2021年8月期も営業キャッシュフローの急増は見込めず、設備投資との差額は88億円のマイナスになると見込んでいる。

phot 「サイゼリヤ」の2020年8月期決算も、11年ぶりの赤字決算だった。売上高が1268億円と前期比19.0%減り、最終損益は34億5000万円の赤字に転落した(サイゼリヤの決算資料より)

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