ワタミ、ロイヤルHD、サイゼリヤ……外食チェーンが軒並み大赤字に転落 業態転換など急ぐ磯山友幸の「滅びる企業 生き残る企業」(3/3 ページ)

» 2020年10月28日 07時15分 公開
[磯山友幸ITmedia]
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合理化に踏み出す可能性も

 国内の投資は圧縮しても、経済の回復が早い中国での事業拡大を急いだ方が良いという判断なのだろう。サイゼリヤの計画では2021年8月期も、上海と広州、北京で67店舗を新規出店、退店予定との差し引きでも33店増やす計画を維持している。香港、台湾、シンガポールでも新規出店する予定だ。サイゼリヤとしてはアジアへの出店拡大で、生き残りをかける戦略を取る。

 売り上げが激減した外食チェーンは、大半がフリーキャッシュフローの大幅な赤字を金融機関からの借り入れで補っている。加えて、従業員を休職させて国からの助成を得る「雇用調整助成金」などを申請、何とか資金繰りをつないでいる状況だ。とりあえず目先の資金は確保できているものの、本業での多額の赤字が続けば、早晩立ち行かなくなる。

 業態転換によって店舗に配置する人員の効率化なども進めていくことになりそうで、今後、生き残りをかけて、合理化に踏み出す可能性が強い。新型コロナで、テレワークが一気に広がるなど、人々の生活パターンも激変している。今後、景気悪化が本格化すれば、消費者の財布のひもも締まることになり、外食チェーンにとっては、さらに苦難の時が襲うことになりかねない。より来客が見込め、収益性も維持できる業態への転換を進める動きは、今後ますます本格化することになるだろう。

著者プロフィール

磯山 友幸(いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト。1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年に退社、独立。著書に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)、『「理」と「情」の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP )、『2022年、「働き方」はこうなる 』(PHPビジネス新書)、共著に『破天荒弁護士クボリ伝』(日経BP )などがある。


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