ワタミ、ロイヤルHD、サイゼリヤ……外食チェーンが軒並み大赤字に転落 業態転換など急ぐ磯山友幸の「滅びる企業 生き残る企業」(1/3 ページ)

» 2020年10月28日 07時15分 公開
[磯山友幸ITmedia]

 居酒屋など外食チェーン大手の「ワタミ」は10月5日、居酒屋から焼肉店への大々的な業態転換を打ち出した(ワタミ、120店を「焼肉の和民」に転換 料理配膳ロボット、特急レーンを使用した“非接触型”店舗に参照)。居酒屋の「和民」全店のほか、「ミライザカ」「三代目鳥メロ」などグループ全体の3割にあたる120店舗を「焼肉の和民」に切り替えていくという。

phot 「ワタミ」は居酒屋から焼肉店への大々的な業態転換を打ち出した(撮影:山崎裕一)

 新型コロナがなかなか終息しない中で、外食業界は厳しい状況が続いている。特に和民のような居酒屋チェーンは顧客が戻らず、存亡の危機に立たされている。日本フードサービス協会の集計によると、9月の「居酒屋」チェーンの来客数は前年同月の53.8%、売上高は52.8%にとどまっている。

 「パブ・ビヤホール」の客数46.5%、売上高44.4%に比べればまだマシとはいえ、「ファミリーレストラン」チェーン全体の売上高が前年同月の80.3%まで回復し、「ファストフード」チェーン全体が95.5%にまで戻っているのと比べると、壊滅的な状態だ。

phot 日本フードサービス協会 外食産業市場動向調査 2020年9月度 結果報告

 「GoToイート」などのキャンペーンが始まっているものの、どうしても「密」が避けられないイメージが強い居酒屋は敬遠されている。新型コロナが下火になったとしても、完全に終息しない限り、居酒屋の来客数などが元に戻るとは考えにくい。ワタミが一気に舵を切るほど、居酒屋業態の先行きは厳しいということだろう。

phot コロナ禍で牛肉を使った新メニューを打ち出すワタミ(撮影:山崎裕一)

 前述の日本フードサービス協会の9月調査の詳細を見ると、「焼肉」チェーンは売上高が前年同月の91.7%にまで戻っている。52.8%の居酒屋を91.7%の焼肉店に変えることは、ある意味、合理的な決断とも言える。もともと排煙が必須で換気が行き届いているイメージの強い焼肉店は、消費者にとって新型コロナ下でも行きやすい業態と言えるのかもしれない。

 新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)による外食需要の激減で、外食産業は存亡の危機に直面している。ワタミの「業態転換」は、極端にマーケットが変貌する中で、生き残りをかけた行動とみていい。こうした「業態転換」や「新業態進出」に生き残りをかける動きは、ワタミだけではない。

phot 牛肉での巻き返しを狙う(新メニューのユッケ風 黒毛和牛肩ロース炙り、撮影:山崎裕一)

ロイヤルや吉野家は宅配事業に参入

 レストラン大手のロイヤルホールディングス(HD)や牛丼チェーン大手の吉野家HDは、宅配事業に参入すると発表した。ロイヤルHDは宅配や持ち帰り専門店を都内に出すとしているほか、吉野家HDも宅配専門店を都内で展開する。また、サイゼリヤも、実験的に宅配やテークアウト、小型店といった新たな業態を探っている。

 外食チェーンが業態転換に動く背景には、足元の業績の大幅な悪化がある。ワタミの2021年3月期の第1四半期(2020年4月から6月)は売上高がなんと44.3%も減少、最終損益は45億5000万円の赤字となった。新型コロナによる緊急事態宣言が出されていた時期と重なった3カ月の決算だったため、大幅な赤字となった。

 通期の業績については「合理的に算定することが困難」だとして「未定」としているが、第1四半期の赤字を吸収できる状況にはなく、さらに赤字額が拡大することは必至な情勢だ。 

phot ワタミの2021年3月期の第1四半期は売上高が44.3%も減少、最終損益は45億5000万円の赤字となった(ワタミ2021年3月期 第1四半期決算短信より)
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