分社以降、28年を経た現在、ドコモの持つインフラはドコモ自身が開拓したもので、決して電電公社の遺産ではない。ドコモの肩を持つつもりは毛頭ないが、携帯電話市場にはKDDI、ソフトバンクに加え、楽天も参入。ドコモ以外はサブブランドを作り、格安SIMといわれる低廉さを訴求するMVNOが並んでいる。ナンバーポータビリティーの導入で、転出が進んだ上での結果なのだから、実力値としてナンバーワンシェアを誇っているといっていい。
ドコモは値下げの結果、収益性を落として減収にはなっている。しかし、それでも営業利益率は2割近い。NTTグループ全体の利益貢献の割合は50%を超えており、グループの中で優等生、言い換えれば金のなる木でもある。
その金のなる木をもっと積極的に使って商売したいというのが、NTT本体の考えなのだろう。NTTグループが抱える法人向け営業、法人向けサービスやソリューション部隊をドコモと合流させることで、料金値下げの影響による収益性低下と5G投資負担増加の中で収益の幅を広げるのが表向きの大きな理由となる。
中期的にグループ全体の事業利益が高まるならば、それでいいという考えが間違っているとはいわない。しかし、その結果、金のなる木が老木になることを加速させる可能性もある。
ドコモの新社長には、12月1日付でNTT出身の井伊基之氏(現ドコモ副社長)が就く。記者会見で、井伊氏は「コスト削減と競争力強化を命じられている」と話した。今後、コストカットや大きな人事異動の嵐が吹き荒れれば、一時的な収益の向上はあったとしても組織としての力は衰える。
あくまでも“たられば”の話だが、吸収されたあとのドコモに白けた空気が漂うようであれば、サブブランドなしで4割“もの”シェアを維持しているドコモの魅力を削ぐことになろう。
これはドコモで働く人間にとっては、あまりハッピーとはいえない日々が始まることを意味する。そしてドコモがサブブランドを発表し、格安プランを提供し始めたなら、ドコモとはどういう組織になるのだろう。単なる電波を使ったドカン屋になるのなら、そこからNTTのさらなる凋落(ちょうらく)が始まるだろう。
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