菅首相の“ケータイ値下げ”は、格安SIM市場の崩壊を招く ドコモにも副作用本田雅一の時事想々(4/6 ページ)

» 2020年10月29日 12時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

 そもそも、MVNOの始まりそのものが、携帯電話事業者ではできない枠組みで商品を組み立て、ユーザーに選択肢をもたらすことだった。しかし、携帯電話事業者がサブブランドで同じようなことをするとなれば、(より複雑な企業向けソリューションはともかくとして)消費者向けサービスで差別化を行うことは難しくなる。

 つまり、菅首相による携帯電話料金の引き下げ圧力から始まった大容量プランの低価格化は、結果的にMVNOの経営を圧迫し、格安SIMといわれていたサービスの選択肢を狭める結果をもたらすだろう。

NTTによるドコモ買収は、ドコモ落日の始まり?

 仮にMVNOの事業を携帯電話事業者が実際に圧迫し始め、サブブランドを選ぶ消費者が増えたならば、携帯電話事業者は“ウハウハ”になるのだろうか。いや、きっとそうはならない。

 サブブランドの充実で契約回線数を増やそうとすれば、結局はメインブランドの契約回線数が減る。現在、ドコモはサブブランドを持っていないが、もしauやソフトバンクと同様にサブブランドを持つようになれば、競争原理が働いて価格優先の競争が進む。

 消費者にとっては良いことのように思えるが、ドコモの視点でいえば個性を失っていく方向になるだろう。NTTは9月末、ドコモを完全子会社化すると発表した。そもそもドコモはNTTグループ内で、社内ベンチャー的要素が強く自由な気質があるが、NTTがドコモを吸収合併させたあとにも、ドコモのカルチャーは残るのだろうか。

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