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50代管理職が転職を決めた、オンライン副業の収入と働き方定年間近、新しい世界に飛び込んだ(1/3 ページ)

» 2020年11月01日 09時00分 公開
[猪尾愛隆ITmedia]

本記事について

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、リモートワークが普及する中で、通勤時間などが減り“スキマ時間”が増えたことを受け、リモートで副業を行う“オンライン副業人材”が増えている。彼らはどんな副業をしているのか、企業はどのように副業人材を活用しているのかを解説する。著者は、人材シェアリングサービスの“中の人”であるJOINSの猪尾愛隆代表取締役。

 地方の中小企業で“オンライン副業”をしたことがきっかけで、自身の市場価値を確認できて自信を持ち、東京の大企業を早期退職して転職した50代男性がいる。男性は大手メーカーのエンジニアで、定年退職を2年後に控えていた。なぜ、安定した大企業での再雇用の道を選ばず、新しい世界に飛び込む決断をしたのか。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

「管理職になっても、エンジニアとして現場に立ちたかった」

 都内在住の男性は、1991年に中途採用で大手メーカーに入社。入社後はソフトウェア開発に携わり、担当製品の市場拡大に伴い、30代で開発兼システムエンジニア(SE)として国内外のユーザー対応をしてきた。40代半ばで管理部門へ異動となり、2004年には管理職に。「管理職になっても20年以上続けてきたソフトウェア開発に携わりたい、という気持ちはいつも持っていた」と男性は振り返る。

 エンジニアとしての腕を生かすため、19年10月、長野県の従業員約20人の精密部品メーカーで、ソフトウェア開発のオンライン副業をスタートした。

 この精密部品メーカーでは、コンピュータで制御する「NC旋盤」を使って、カメラの部品やATMのカードリーダーなど精密部品を製造している。精密部品はNC旋盤にプログラミングして作るが、1万本以上ある過去のプログラムが整理されていない状態で、検索できるシステムがなかった。

 この会社の社長は「NC旋盤の機器をプログラミングする人材を育成したくても、近い製品のプログラムを参照して新たなプログラムを作るといった作業が属人的な記憶に依存した方法でしかできなくなっており、生産性向上を妨げる状況となっていた。こうしたプログラムを検索できるシステムが欲しいとは思っていたが、システム会社に依頼するほどでもないし、社内ではできる人もおらず、どうやって実現すれば良いかのイメージも湧いていなかった」と話す。

 この会社は、地元の金融機関から都市部の大手企業の即戦力の人材をピンポイントに業務委託契約で雇えるようになったと聞いて、募集してみることを決意。募集に対し、男性を含む5人が選考を通過した。男性は、面接の時点から検索システム開発の詳細な手法を示して契約を勝ち取った。

 筆者が地方企業の経営者からよく聞く、契約の決め手となった理由として「うちの会社に寄り添ってくれそうだから」や「難しい専門用語を使わなかったから」などが挙げられる。どれだけ自分ごとと捉えてくれるかという点も、経営者が重視するポイントだ。

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