トヨタの決算説明会は例年、社長が登壇するのは本決算のみ。今回、中間決算の説明会に出席した理由について、豊田社長は「コロナ危機という有事であるから」と話した。そして、「特に有事のときは雇用を守り、利益を出して、税金を納めるのが責任。自動車産業は経済への波及効果が大きい。また、前を向いて頑張っている関係者への感謝と、この後の3Q、4Qも頑張っていく決意を伝えたかった」と説明した。
期初の想定よりも業績の回復が早く、業績予想を大幅に上方修正できたことについては、「11年間の取り組みによって、企業として強くなってきた」と話す。11年前に何があったかというと、リーマンショックだ。当時の打撃は甚大で、09年3月期は赤字に転落。回復には時間を要した。
リーマンショック時と今回のコロナ危機の回復スピードを比較するために豊田社長が示したのは、販売の落ち込みが最も大きい月から5カ月間の販売台数の前年比。リーマンショック時は前年比76%で、市場全体を4ポイント下回っていた。今回は前年比80%で、市場を3ポイント上回る回復を遂げているという。
「リーマンショックや東日本大震災、円高など、いろいろなことがあったが、少しずつ取り組みを積み上げてきた結果だ」と豊田社長は強調する。“積み上げてきた”という言葉が示すのは、リーマンショック時と比べて資金が潤沢になったことだけでなく、「働く人たちが強くなった」こと。それが企業としての強さに表れているという。
それは、同社が注力してきた原価低減活動が浸透してきたことだけにとどまらない。今回のコロナ危機では、工場の生産性向上や販売現場のオンライン活用などの取り組みによって「1台1台を積み上げるために生産も販売も必死になって仕事をした」(豊田社長)。さらに、工場を活用してマスクやフェイスシールドを製造するなど、社会の危機を乗り越えるために企業としてできることも行っている。
豊田社長は「自動車産業の回復スピードは早く、日本経済に良い影響を与えられているのでは。トヨタの数字は(従業員や取引先など)多くの人の頑張りに支えられた結果だ」と語った。国内外を問わず、新型コロナの感染状況は先行き不透明だが、商品力や生産性の向上、将来を見据えた研究開発など、着実に事業を進められる体制を整えていたことが、業績回復につながっているようだ。
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