当面の資金繰りには不安はない。9月中間期の営業キャッシュフローは1909億円の赤字だったが、投資を抑えたほか、長期借入金4356億円の借り増しで、9月末の現金及び現金同等物は4510億円と3月の2398億円から大幅に増加している。また、金利が高い代わりに返済の優先順位が低く、一部を資本に組み入れられる「劣後ローン」を、10月30日付けで4000億円調達した。2000億円ずつの返済期間が35年と37年という長期にわたる契約で、政府系の政策投資銀行がアレンジャーを務めている。手元資金が枯渇する前に、ポスト・コロナの市場規模に合わせた事業規模に縮小できるかが問われるわけだ。
9月中間期の営業キャッシュフローは1909億円の赤字。一方で投資を抑えたほか、長期借入金4356億円の借り増しで、9月末の現金及び現金同等物は4510億円に(ANAホールディングスのWebサイトより)あるいは、それを回避するには、新型コロナ後を見据えて、成長市場を取り込むしかない。むしろ、こうした世界中の航空会社が苦境に立たされている時にこそ、将来の需要増が見込めるアジアなどの航空会社を傘下に収めたり、提携を拡大したりしていくべきだろう。政府系金融機関などからの長期資金を、「守り」のためだけに使うべきではない。
ではJALとの合併はどうか。市場が急速に縮小している際に、ライバルの2社が合併するということは、1+1を1にするということに他ならない。しかも、国内航空市場が1社独占になれば、競争がなくなり、料金が固定的になり、利用者にデメリットが生じることになる。そうでなくても人口縮小で市場縮小が懸念される国内での合従連衡は最悪のシナリオである。
磯山 友幸(いそやま・ともゆき)
経済ジャーナリスト。1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年に退社、独立。著書に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)、『「理」と「情」の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP )、『2022年、「働き方」はこうなる 』(PHPビジネス新書)、共著に『破天荒弁護士クボリ伝』(日経BP )などがある。
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