焼肉業界で「大豆ミート」が主流になる、これだけの理由スピン経済の歩き方(4/5 ページ)

» 2020年12月15日 09時45分 公開
[窪田順生ITmedia]

代替肉でリスクヘッジ

 なんてことを耳にしても、「脱ガソリンといい、そんな白人社会のデマに踊らされる必要はない。日本は日本の道を進めばよし!」という方もいらっしゃるかもしれないが、この件に関しては残念ながら、日本はそこまで偉そうなことを言う資格はない。

 農林水産省の品目別自給率によれば、肉類は52%。飼料自給率も考慮した場合の自給率はわずか7%である。われわれが焼肉チェーン店でお手頃価格でおいしくいただいているカルビの産地などを見れば明らかだが、庶民の食肉文化は、海外からの輸入肉が支えてくれているのだ。

 では、このような「食肉」をめぐる世界のさまざまな状況を客観的に俯瞰(ふかん)したところで、冷静に考えていただきたい。この先も永遠に、現在のような低価格で、カルビやハラミを腹一杯食べられるだろうか。

 もちろん、食べたい。食べたいに決まっているのだが、現実的にはかなり難しいのではないか。世界的な需要の高まりから輸入肉の価格が上がっているのかもしれない。国内肉の生産体制を強化するといってもこれまで実現できなかったわけだから、それも限界がある。

 そんな中で、もし新型コロナのようなパンデミックが起きたら目も当てられない。数カ月前のトイレットペーパーやマスクのように、国産肉を買い占めてしまうなんて、日本人らしいパニックが起きてしまう恐れもゼロではない。

 では、そのような事態を避けるためにはどうすべきかというと、日本でも積極的に「代替肉」を普及させておくのだ。先ほど申し上げたように、体にいいとか環境に優しいというような観点ではなく、「食の安全保障」のために必要な政策としてである。

 今回、コロナ危機で日本中が学んだように、これからの時代は「そんなバカみたいなことが起こるわけないじゃん」ということが普通に起きていく。ということは、今は捨てるほどある肉も、何かの拍子で消えてしまうことも想定して、リスクヘッジをしておかなければいけないのだ。

 幸いというか、日本は味噌、醤油、納豆など古くから大豆の加工技術を磨いてきた。代替肉に関しても、欧米などよりもはるかに長い蓄積がある。その象徴が、「がんもどき」だ。

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