焼肉業界で「大豆ミート」が主流になる、これだけの理由スピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2020年12月15日 09時45分 公開
[窪田順生ITmedia]

「食肉税」導入を検討している国も

 「2050年における世界の食糧受給見通し」(農林水産省大臣官房政策課食糧安全保障室、令和元年9月)によれば、2050年の牛、豚、鶏という肉類の世界の需要量は、10年から1.6倍に跳ね上がるという。日本をはじめとした先進国は人口減少に転じていくので、需要は横ばいだが、これから経済発展をしていくアフリカ諸国などを中心に、食の嗜好が多様化していくからである。

 だったら、生産を1.6倍に増やせばいいじゃないかと思うかもしれないが、話はそう簡単ではない。牛、豚、鶏は生き物なので当然、大きく育てるのには餌がいる。水も飲む。そして、病気にならないように運動をするような広い場所もいる。つまり、穀物を育てる畑や、膨大な量の水、そして牧場や生産工場を今より1.6倍増やさなくてはいけないので、それだけ自然環境に負荷がかかってしまうのだ。

肉の需要が増えれば、環境負荷が大きい

 国連食糧農業機関(FAO)によれば、畜産業が排出するCO2は年間7.1ギガトンで、人為的に排出されている温室効果ガスの約15%に相当し、他の業種の中でもダントツに多いという。そのため、国際社会で進められている気候変動緩和対策のムーブメントの中で、実は「食肉」は最も罪深いものとされ、国民に少しでも「肉離れ」をさせようということで「食肉税」の導入を検討している国もあるくらいなのだ。

 そんな環境破壊の犯人という汚名に加えて、欧米の専門家の中には、「食肉」がウイルスパンデミックを引き起こしていると指摘をする人たちもいるのだ。

 『2010年、まるでコロナ禍を予告するような先見の書『パンデミック』を著したことでも知られるスウェーデンウプサラ大学ビョルン・オルセン教授も、「肉食を減らし、家畜福祉を向上させ、そして生物の多様性を守らなければ、新型コロナウイルスよりも大規模なパンデミックが起きるのは時間の問題だ」と警告している』(Forbes 10月13日)

 とはいえ、世界には肉を食べたい人たちがたくさんいる。そこで注目されているのが、大豆などの植物由来の「代替肉」である。米調査会社のMarkets and Marketsによれば、世界の代替肉市場は23年に約7152億円まで成長する見込みだという。

 実際、それを裏付けるように、代替肉企業が著しく成長しており、19年5月には、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が出資している、米企業「Beyond Meat」がニューヨークのナスダック市場に上場を果たした。同社はコロナ禍の米国で起きた肉不足を追い風に、さらに力強く成長を続けている。

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