株式上場については「5年前から上場を目標としていた」としながらも、上場までの5年で上場の目的は変わったという。バルミューダは10年に発表したThe GreenFan開発時点では、寺尾氏を含めて社員が3人だけという環境だったが、製品のヒットともに会社は大きく拡大。
ただし会社が一定の規模を超えると、今度は製品の在庫や品質管理などで苦しむこともあった。このため、5年前に上場を目指したときは「上場企業並の強い管理レベル」を実現するのが上場の一番の目的だったと語る。
この5年でバルミューダの品質管理レベルは大きく飛躍した。大きな理由はバルミューダの製品開発サイクルにある。大手メーカーが春と秋などで製品をモデルチェンジするのに対し、バルミューダは同じモデルを数年単位で発売するなど「長く使える製品」が多い。一度開発した製品は長期間市場に出回るため、おのずと品質管理レベルは高くなったという。
このため、現在は上場の目的を従来の「品質管理レベルをアップするため」から、「もっと大きなチャレンジをするための資金調達」として活用したいと述べた。具体的には人材確保やシステムの最良化、そしてブランド価値向上の3つのジャンルに資金を投入する予定だ。
なかでも注目したいのがブランド価値向上という分野。バルミューダは従来ほとんど宣伝を行わないマーケティング戦略で知られている。このため、いままでは商品力による口コミやPRで売り上げを伸ばしてきた。しかし、家電などに興味のない人にもバルミューダのブランドをより広く認知してもらうため、今後は上場による資金で積極的なプロモーションの実施や継続を予定しているという。
会見では新型コロナウイルスによる影響を問う質問もあった。これに寺尾氏は「良い面と悪い面、どちらもある」と答えた。良い面は、巣ごもり需要による売り上げの増加。厳密な巣ごもり需要による数値は分からないが、肌感覚としては10〜15%ほどの売上増がコロナによるものだと感じているという。
一方、悪い面は開発・生産の遅延だ。バルミューダは海外生産を行っているが、従来までは製造工場の立ち上げの支援や、サンプル確認などは社員が現地に行って素早く終わらせることができた。一方、現在は渡航を自粛しているためにサンプルは一度日本に郵送され、それに対してレスポンスする形式で開発が進められている。従来よりタイムラグが大きいため、今年春以降に発売予定だった製品はすべて3カ月ほど予定が遅れてしまったそうだ。
寺尾氏は、「上場した以上は営業利益を最速で最大化する責任もある」ともコメントした。過去の実績では、The GreenFanの発売のほか、トースターや炊飯器などの調理家電ジャンルに参入したときに大きく売り上げが伸長。扇風機では売上高は11倍になり、トースター発売後は売上高が4倍になるなど大きく飛躍した。このため、今後もバルミューダの発展のために空調・調理家電に続く新たなジャンルを次々と開拓したいと今後の抱負を述べた。
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