コロナをきっかけとして始まったオンライン参拝だが、元をたどれば、寺社の一般的傾向として、檀家(だんか)や信徒が減少しつつあり、特に高齢化が問題となりつつあった。
大きな寺社ほど高い山の上にあり、長い階段などを含めて、高齢者の参拝が難しい。まして、高齢者施設などに入居してしまえば、参拝するのはますます難しくなる。
高齢化で参拝が難しくなっていく中、参拝客の減少は長期的な課題でもあった。そこをオンラインで解決しようというわけだが、伝統的な寺側では、こうしたデジタル技術を用いた参拝について、宗教あるいは宗派として取り組み方が整理しきれず、議論が割れ、課題意識はありつつもなかなか実現しなかった。そこに訪れたコロナ禍によって、新しい方法を試してみる機運が醸成された面もかなりあるという。
新型コロナの問題が厳しくなった5月に、1つ目の転機が訪れる。関西の49のお寺が、「西国四十九薬師霊場会新型コロナウィルス収束一斉祈願」として一丸となってコロナ退散の祈祷を行ったのだ。この時いくつかの寺院の祈祷をZoomを使ってライブ中継した。
次に、8月から、積極的な姿勢を見せた2寺院で、有料会員向けのサービスとして、朔日(ついたち)参りをスタートさせた。これは毘沙門天を祀(まつ)る寺院で行われたため、毘沙門天朔日参りとして以後毎月一日に定期開催が始まったのである。
それに続く3つ目の動きとして、今回の初詣がライブ中継されることになった。初詣の要素として、オンラインでのお賽銭、初日の出を加え、厳粛な中にも元日らしい演出を行うことになる。
オンライン初詣参拝は、疫病退散の祈りを含め、新年の祈祷、祈願をライブ配信で行うもの。普通の家庭では、毎年の習慣的に初詣に行く寺社は決まっているだろうが、そこも密である可能性が高い以上、例え参拝先が変わったとしてもオンラインで初詣ができることにはメリットがある。寺社の側にとっても海外を含めた遠隔地からの参拝を期待できる。
また運営元の和空プロジェクトでは、ミニマムでは数十万円で、ライブ中継が可能だとしており、必ずしも予算の潤沢な寺社でなくてもオンライン参拝が可能になると考えている。さらに、場合によっては費用をクラウドファンディングでまかなうこともできるだろう。将来の計画としてはこうしたクラウドファンディングの運営も含めて、和空プロジェクトが手伝うことも視野に入れている。
こうした施策によって、地域地域にとって重要な寺社に対して、ふるさとを離れた人たちが「ふるさと参拝」のような形で支えることも考えられる。
ひとまず初の試みであるオンライン初詣は、無料配信の他に、3810円で限定のお札が郵送される有料バージョンもあり、有料版のチケットはチケットぴあとローソンチケットで販売する。
神峯山寺本堂からの配信が0時0分から始まり、午前3時から神峯山寺 化城院 毘沙門初護摩祈願と法話、午前4時から朝護孫子寺 本堂 大般若祈祷の録画を流す。また、7時からは神峯山寺より「初日の出」遥拝の模様を放映する。
時間は目安で、状況次第で変更の場合もある他、当然ながら初日の出の遙拝は天候に左右される。
ユニークなのはライブ配信の投げ銭システムを利用したお賽銭(さいせん)システムで、初詣需要の落ち込みが予想される中、寺院側でも新たな需要が喚起できる可能性が高い。報道によると、他の寺院でも2021年はオンラインで初詣を行うことろが相次ぐようだ。わが国の伝統的宗教行事とデジタル技術によるオンラインライブという組み合わせは意外性が高く、ほかの伝統行事にも広がるかが注目される。
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