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» 2021年01月07日 15時35分 公開

磯山友幸の「滅びる企業 生き残る企業」:ポストコロナの勝者は佐川かヤマトか 巣ごもり効果で業績好調の宅配業界 (1/4)

宅配企業が「巣ごもり効果」に沸いている。新型コロナによってライフスタイルが変わり、eコマース市場が急拡大することで宅配便の需要が急増していることをチャンスと捉えている。その勝者は佐川か。それともヤマトか?

[磯山友幸,ITmedia]

 新型コロナウイルスのまん延で外出もままならない中で、宅配企業が「巣ごもり効果」に沸いている。2020年4〜9月期(2021年3月期の9月中間期)は佐川急便のSGホールディングス(以下SG)の売上高が前年同期比8.0%増の6348億円となり、純利益は372億円と69.9%も増加した。クロネコヤマトのヤマトホールディングス(以下ヤマト)は売上高が8060億円と伸び率は0.7%増にとどまったが、純利益は141億円と前年同期の34億円の赤字から黒字転換を果たした。

 21年3月期通期でも、SGは売上高6.3%増の1兆2480億円、純利益は42.7%増の675億円を見込み、ヤマトは売上高1%増の1兆6460億円、純利益は56.8%増の350億円となる見通しだ。両社とも日本経済の先行きについては「依然不透明な状況」だとしながらも、新型コロナによってライフスタイルが変わり、eコマース市場が急拡大することで宅配便の需要が急増していることをチャンスと捉えている。

phot ヤマト運輸による自動運転車を使った宅配の実現を目指す「ロボネコヤマト」(2018年4月アイティメディア撮影)

売上高のヤマト 利益のSG 

 SGの上半期の取扱荷物個数は6億8600万個と4.5%増加、ヤマトの宅配便も9億9400万個と13.1%増えた。企業活動が停滞したことで「クロネコDM便」は3億9800万冊と23.4%減ったが、荷物の急増に両社とも現場は超繁忙の事態となった。

 業績数字をみても分かる通り、宅配便の取扱個数や売上高ではヤマトがSGを圧倒するが、こと利益になるとSGが断然ヤマトを上回っている。通期見通しの営業利益段階でもヤマトの680億円に対して、SGは970億円だ。

 実は16年3月期まではヤマトの方が営業利益は大きかった。16年11月にヤマト運輸が労働基準監督署から未払い残業代に関する是正勧告を受けていた事が発覚するなど、宅配ドライバーの過重労働問題が表面化。宅配荷物の急増に自社の宅配ドライバーでは対応しきれず、外部の物流業者に宅配業務の一部を外注したことが原価を大幅に高め、営業利益が激減した。宅配ドライバーの労働環境の改善を理由に、料金を値上げしたほか、アマゾンなど大口顧客への値上げ交渉も進めた。

 実は、ヤマトの営業利益がSGに抜かれる伏線はそれ以前からあった。売上高営業利益率を見ると、13年3月期にはヤマトは5.2%、SGは3.6%だったが、14年3月期にはSGが5.2%とヤマトの4.6%を一気に抜いていたのだ。

 理由ははっきりしている。SGが売り上げ規模の拡大よりも利益重視の戦略を取ったからだ。それまで宅配便業界の常識は、取扱量を増やすことで荷物1つを運ぶコストを下げること。トラック1台を使うならば載せる荷物が多い方が効率化できる。ところが、当時から爆発的に増えていたアマゾンなどEC(エレクトリック・コマース)の宅配は勝手が違った。個別の宅配個数の急増で、不在時の再配達が多くなり、宅配ドライバーの業務量が劇的に増えたのだ。これが後のヤマトのドライバー問題になって顕在化していく。

phot 実売上高営業利益率を見ると、13年3月期にはヤマトは5.2%、SGは3.6%だったが、14年3月期にはSGが5.2%とヤマトの4.6%を一気に抜いていた(筆者作成、縦軸が売上高営業利益率(%)、横軸が年)
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