ポストコロナの勝者は佐川かヤマトか 巣ごもり効果で業績好調の宅配業界磯山友幸の「滅びる企業 生き残る企業」(3/4 ページ)

» 2021年01月07日 15時35分 公開
[磯山友幸ITmedia]

労働力不足が一段と深刻化

 ヤマトは、従来の「モノを運ぶ」機能だけを求める顧客に対しては、コンビニエンスストアでの受け取りや配達ロッカーの設置などを進め、「EAZY」などによって、都合の良い時に荷物を受け取れる仕組みの構築・拡大を狙っている。また、配送するドライバーの業務量を減らすために、無人車などでの配送実験も実施している。さらにドローンを使った拠点間輸送なども実験中だ。

 問題は、今後も労働力不足が一段と深刻化するとみられることだ。新型コロナの影響でパートやアルバイトが激減するなど、現状足元では労働力不足はひと息ついているが、今後も日本の人口は減少を続けることがはっきりしている。何せ、19年の1年間に生まれた子どもは86万人。20年はさらに減少する見通しだ。移民の受け入れも難しい中で、今後も労働力不足が深刻化する。

 非対面の配送サービスなどは新型コロナが収まった「ポスト・コロナ」の時代になっても減少しないとみられる。生活スタイルや社会の在り方が変わり、物流サービスへの期待は今まで以上に事細かになっていくと見ていい。そうした中で、宅配のネットワークをすでに持っているヤマトなど運輸大手へのニーズも多様化する。非対面の運送サービスはインフラとしてどんどん無人化していくだろう。それをシステムとして構築していけるかどうかが宅配企業の盛衰を決める。

 一方、すでにヤマトが実験的に全国で手掛けている「見守りサービス」や「ネコサポステーション」などの地域密着型の事業も、高齢化や地域の過疎化が進む中で、今後ますますニーズが高まるとみられる。そうした「人と人」のつながりが求められる事業で、いかに収益を上げていくかがポイントになるだろう。つまり、人手を介する業務でいかに高い利益率を確保できるかが、今後の事業収益を占うカギになりそうだ。

phot ヤマトグループが実験的に全国で手掛けているネコサポステーション(ヤマト運輸のWebサイトより)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.