コロナ禍で参加者を3倍まで増やしたhontoのオンライン読書会「ペアドク」に潜入「近づけない、集めない」時代を生き抜く、企業の知恵(2/3 ページ)

» 2021年01月19日 21時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]

常識だと思っていることが非常識に

 『パラダイムシフト』は、最初は別の企画で執筆していたという。新型コロナウイルスが現れたことで「世界が変わると気づいて、これまで考えてきた本質的なことを皆さんに何らかの形で伝えるべき」だと考えて、内容を変えた。ただ、この本はアフターコロナについて語るものではない。パラダイムシフトと、そこにある本質的な「問い」について考えている。講演ではその一つとして、「常識だと思っていることが、実際は非常識になっている」ことの例を挙げた。

 「ジョギングウェアを着て外を走ると、気持ちがいいし、健康的かもしれません。では、ウェアはポリエステルから作られていますね。ヨガも健康的ですが、ヨガマットはプラスチックでできています。この10年間で海に浮かぶプラスチックの量は圧倒的に増えました。

 プラスチックは、完全になくなるまで何年かかるのか分かっていません。一説には400年くらいかかるといわれています。それなのに、われわれはなぜペットボトルを使わなくてはならないのでしょうか。ポリエステルやプラスチックを作るには石油を使います。その結果、モーリシャス沖で日本企業が関係する船が座礁し、原油が流出する事故が起きてしまいました。私はダイビングをするのでモーリシャスは大好きですが、元のきれいな海に戻るには30年くらいかかるそうです。

 あるいは、皆さんはサーモンやアボカドが好きだと思います。僕も食べます。サーモンはチリ産が多いですが、チリではサーモンファームが増えて、南太平洋の環境をつぶしているのです。漁師は採った魚が売れなくなって職を失い、安い賃金でサーモンファームで働かざるを得なくなりました。これは環境問題だけでなく、社会問題でもあります。アボカドの主要な産地のメキシコでは、麻薬カルテルが農家を乗っ取ろうと攻撃し、農家は武装して戦争状態になっています。自分にとって良いことは、世界にとって良いという意味ではないのです」

phot ヨガは健康的な運動として知られている一方、ヨガマットは環境に配慮しているとは言い難いプラスチックでできている(写真提供:ゲッティイメージズ)

「価値観は20年で逆転していく」

 ピョートル氏の講演が20分弱で終わると、参加者のアウトプットをもとに対話が始まる。参加者は、自分の仕事や生活のなかで疑問に思ったことをピョートル氏に質問した。例えば、次のような質問があった。

 「パラダイムシフトには、個人のパラダイムシフトと組織のパラダイムシフトの2種類がある気がしているのですが、組織のパラダイムシフトを変える際は、変わることを好まない組織の上の世代を巻き込んでいく必要があると感じています。こういった変わることを好まない人たちを巻き込む際に、工夫することや意識することなどはございますか?」 

 この質問に対してピョートル氏は、「建設的に答えてみます」と言って語り始めた。

 「こういう話は何千年間も続いていることです。年をとった人たちが若者の文句を言うのは、エビデンスがあるのかどうかは分からないですけど、僕が読んだ話では、古代メソポタミアのバビロンに関する文書にも出ています。価値観が変わっていくことで、対立が起きるということです。

 変わることを好まない人たちという表現は、これまで頑張って今のインフラを作ってきた人たちが、皆さんに否定されているということですね。昭和のおじいさんたちが頑張って、汗をかきながら苦労したからこそ、日本が今のようになっています。それを否定していいのでしょうか。もちろん変わり続けるのは人類の前提です。ここで話していることは20年後には古い話になります。皆さんの孫たちは納得できなくなる。多くの歴史を見ると、約20年ごとに価値観は真逆になっています。

 20年後に皆さんが否定されたらどうしますか。日本の場合、会社に入って、年功序列で20年間我慢して部長になったのに、若者に『お前の言っていることはおかしい』と言われたら、怒りしか感じられないですよね。なので、その人たちにまず向き合う。分かってみる。同情、共感、思いやりを示して仲良くなれば、手伝ってくれます。お互いに納得できるコンセンサスをどこかで見つけて、信用を得ることが必要ではないでしょうか」

phot ピョートル氏の講演が20分弱で終わると、参加者のアウトプットをもとに対話が始まった
phot ピョートル氏の講演の前に参加者はグループに分かれ、書籍の感想をシェアしていた

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