地銀なども巻き込んだ証券業界の再編が始まっている。業界全体で手数料の値下げが進行し、SBIグループなどは無料化を宣言している。そんな中、自社で顧客を集めて証券売買の仕組みを提供する形から、顧客獲得および対応をになう企業と、証券取引システムを提供する企業へと水平分業の動きが出てきた。
自社の取引システムをAPIとして提供し、プラットフォーマーを目指すとしているのが、ネット証券大手のうちの1社、auカブコム証券だ。2012年から株式取引のAPIを開放してきたが、20年7月には投信販売機能のAPI提供を始めた。さらに8月にはREST APIを使った高速発注環境を提供、10月には先物とオプションのAPIを開放、さらに他証券会社向けに貸株サービスをSaaS形式で提供するなど、矢継ぎ早にAPI提供を進めている。
銀行などに限らず、非金融業でも資産運用ビジネスへの参入が相次ぐ中、事業者に株式や投信の販売、取引システムを提供するポジションを目指すという構想だ。
同社の齋藤正勝社長は、「日本株、投信の販売システム、取引システムは感覚的には3社くらいに収れんしていく。カテゴリーの中で3つくらいしか生き残れないのではないか」と話す。
1999年に創業したauカブコム証券は、2007年に三菱UFJ銀行の資本が入りグループ(MUFG)の連結子会社化。その後、19年にKDDIがTOBを行い、現在は三菱UFJホールディングス51%、auフィナンシャルホールディングス49%と、2大グループの傘下にある。
まずはこのグループへ取引プラットフォームを提供し、その後、さまざまな業種への展開を狙う。すでにau PAYの「ポイント投資」では、auカブコム証券がミニアプリの形でサービスを提供している。そのほか、株式APIに関して契約が60社弱、稼働している企業は20社となっている。
「MUFG、KDDIというパートナーは得られているので、そこ経由でどんどん広げていく。すでに新規口座開設の8割がKDDI、またauじぶん銀行経由になっている。思った以上にKDDIのパワーはすごい」(齋藤社長)
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