過去最高「純利益1兆円」、絶好調のソニーが抱える“アキレス腱”ゲームは絶好調だが

» 2021年02月03日 16時56分 公開
[ITmedia]

 ソニーは2月3日、2021年3月期(20年4月〜21年3月)連結業績予想を上方修正し、純利益が過去最高の1兆850億円(前期比86.4%増)になる見通しだと発表した。従来予想は8000億円だった。巣ごもり需要の恩恵を受け、ゲーム事業などが好調だった一方、劇場の閉鎖が影響し、映画部門が“アキレス腱”となっている。

 売上高は従来予想から3000億円増の8兆8000億円(前期比6.5%増)、営業利益は2400億円増の9400億円(同11.2%増)を見込む。

photo ソニーの十時裕樹副社長=同社の決算発表会ライブ映像より

 主力のゲーム&ネットワークサービス分野は、売上高が従来から300億円増の2兆6300億円、営業利益が400億円増の3400億円を予想。第3四半期(20年4月〜12月)で、プレイステーション5(PS5)などのゲームソフト、「プレイステーションプラス」を含むネットワークサービスの売り上げが好調だったことを踏まえ、上方修正した。

 ソニーの十時裕樹副社長は「巣ごもり需要が続く中、ネットワークサービスの増収により、ゲーム事業の収益構造は大きく変化した」と説明。第3四半期に投入したPS5については、販売台数が350万台を突破したが、世界的な半導体不足の影響もあり「需要に対し(供給が)応えられていない」とし、改善に力を入れる。

 イメージング&センシング・ソリューション分野は、売上高が500億円増の1兆100億円、営業利益を520億円増の1360億円になる見通し。昨年、米中摩擦の影響下で、ファーウェイへのモバイル機器向けセンサーの出荷を一時中止し、売り上げが落ち込んだ。ただ、出荷再開の動きに加え、ファーウェイ以外の顧客からの需要もあり、販売台数の見込みを上方修正する。

 このほか、音楽分野(アニメ事業を含む)も売上高・営業利益ともに上方修正。子会社のアニプレックスが配給する『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のヒットなどが寄与した。金融分野も、ソニー生命保険の特別勘定における運用益増などで、従来の見通しを上回る見込みだ。デジカメやスマートフォンなどのエレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野も上方修正する。

 一方、映画分野は、売上高を従来予想から100億円減の7500億円に下方修正。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う劇場閉鎖が続き、作品の公開延期が相次いだためだ。ただ、広告宣伝費の減少に加え、前年度の公開作品などをホームエンターテイメントやテレビなどへ配信することで得られるライセンス料の増収で、営業利益は240億円増の720億円に上方修正する。

 十時副社長は「今年度の作品の公開延期で、広告宣伝費を先送りにできた一方、来年度のホームエンターテイメントやテレビへの配信に影響する可能性がある」と懸念を示した。

photo ソニーの決算説明資料より

 3日発表した21年3月期第3四半期の連結業績は、売上高が前年同期比4.1%増の6兆7789億円、営業利益が11.8%増の9053億円、純利益が87.0%増の1兆647億円だった。

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