ソフトバンク、KDDIとの頂上決戦  NTTドコモの新プラン「アハモ」担当者に狙いを聞いた55万人超えの申し込み(1/5 ページ)

» 2021年02月04日 18時12分 公開
[中西享ITmedia]

 NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク。携帯大手3社のスマートフォン利用料の値下げ案が出そろった。今回のスマホの新料金プランは政府主導の強い値下げ要請に基づいて生まれたもので、3月から新しい料金体系による販売競争が始まる。

 その中でドコモが2020年12月に若者をターゲットに打ち出した新料金プラン「ahamo(アハモ)」は、発表後1カ月で50万人以上が申し込むなど注目を集めている。「アハモ」のサービス設計者らにインタビューして狙いを探ってみた。

phot 「アハモ」のサービス設計に携わったNTTドコモの佐々木千枝氏(左)と高山賢人氏

思い切った「ニッキュッパー(2980円)」

 ここまで大幅な値下げプランが出てきた背景には、総務省の強い行政指導があった。昨年10月の段階でソフトバンク、auが「行動計画」を発表して値下げ案を公表したものの、格安ブランドの値下げだけで主力ブランドの値下げは示されなかった。このため、武田良太総務相が12月初めに「ユーザーに料金が下がった実感が湧かないと、何の意味もない」と強い不満を表明、大手各社に対して主力ブランドの値下げを迫った。

 こうした意向を受けて発表された3社の新しい料金プランを見ると、ドコモとソフトバンクは、データ容量が20GB(ギガバイト)で毎月2980円(以下、税別)なのに対し、auは1月に新料金ブランド「povo(ポヴォ)」を発表。ドコモやソフトバンクと同じデータ容量で通話料金を含まない形で同2480円とし、500円安い料金を打ち出した。

 各社がこれほどまで『官製値下げ』の料金プランを出してきたのは驚きで、菅義偉首相が官房長官時代に指摘した「4割値下げ」を意識した料金になっている。スーパーやコンビニの商品にもみられるような「ニッキュッパー(2980円)」の価格まで思い切って下げた背景には、政府の意向には逆らえず、やむを得ず大幅に値下げした事情が垣間見られる。一概には言えないにしても、ここまで値下げすれば菅首相がこだわっていた「4割値下げ」はクリアできそうで、従来のプランとの比較ではかなりの割安になりそうだ。

phot NTTドコモ「ahamo(アハモ)」の提供条件(同社のWebサイトより)

激化する「大手VS. 格安」の販売競争

 大手3キャリアが大幅な値下げ案を提示したことで、格安スマホとの価格の違いがほとんどなくなり、安さを売りにしてきた格安スマホ業界は料金プランの修正を迫られそうだ。これまでは大手と格安は、料金と性能面ですみ分けがなされていた。格安の日本通信などは昨年12月頃から慌てて料金やサービス内容を変更している。3月以降は大幅値下げした新しい価格プランが始まるため、大手と格安との販売競争が激化するのは必至の情勢で、経営体力の弱い格安スマホは淘汰されるリスクがある。

 また、3社を追いかける楽天モバイルは1月29日に、データ容量が20GBまでなら月額1980円とする容量に応じた料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」を発表した。4月1日から適用する。同社は、データ無制限で月額2980円のプランを発表していたものの、その後に大手3社が相次いで楽天の料金水準に追随してきたため、新たなプランを出してきた。使ったデータの容量に応じて料金が3段階で上がり、1GB以下は無料、1GB超から3GB以下は980円、3GB超から20GB以下は1980円、20GB超はこれまでと同じ2980円。データ容量をあまり使わない利用者にとっては割安になるのが特徴だ。

 今回の大手3社の新料金プランはオンライン専用である一方、楽天の場合は店舗でも契約できる。大手3社の牙城を切り崩したいため、さらなる低価格プランを打ち出してきたのだ。容量をあまり使わない利用者の料金を下げ、店舗でも契約ができるようにしたのは、若年層だけでなく中高年齢層のユーザーも狙っている。楽天グループの三木谷浩史社長は、「MVNO(格安スマホ)含めてかなり競争力があると思っている」と大手3社とMVNOへの対抗意欲を示した。

phot 楽天モバイルの新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」の料金構成(同社のWebサイトより)
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