ソフトバンク、KDDIとの頂上決戦  NTTドコモの新プラン「アハモ」担当者に狙いを聞いた55万人超えの申し込み(2/5 ページ)

» 2021年02月04日 18時12分 公開
[中西享ITmedia]

20代狙いのドコモ

 ドコモには今回の新プラン立ち上げに際し、このチャンスを生かしてこれまでソフトバンクやKDDIに奪われてきた若者世代の契約者を取り戻したいとの思惑があった。この数年は、格安スマホなどの登場もあって、若者の利用者がドコモから他社に流出する傾向がみられたからだ。

 「アハモ」のコンセプトを含めたサービス設計責任者の高山賢人氏(マーケティング部、正式には、高は「はしごだか」)は意図を説明する。

 「10〜20代の利用者がほかのキャリアに乗り換える傾向が増えていた。そのため、20代で社会人となった利用者が選んでくれるような信頼してもらえるプランを作ろうと思った。20GBに設定した理由は、20代の平均的なデータ使用料が10〜13GBくらいだったため、こうした世代にストレスなく使ってもらうためには、余裕を持たせるため20GBくらいが良いのではと考えた」

 通話については「10代の利用者は、通話の相手は親と友達が多いのでLINEなどのインターネット通話で事足りる。一方、20代になると病院、不動産業者などそうしたサービスが使えない相手と通話をする機会も増えてくる。そのため事務的な通話が必要になってくるので5分間無料通話サービスを付けることにした」という。

 若者世代と中高年とでは明らかにスマホの利用方法が異なる。若者はLINEやチャットを頻繁に利用して、通話の利用度は少ない傾向がある。動画コンテンツも多く見ることから、データ容量の多いプランが望まれていた。一方で、中高年はネットを使うものの、通話に依存する比率が高い。このため、「5分以内の通話はかけ放題」という「アハモ」は、若者には好都合ではあるものの、中高年層の利用形態には合わない気もする。

チャレンジングな価格

 高山氏によると、このプロジェクトは20年1月に社内から「若者層を取り込めるプランを作りたい」との相談を受けて立ち上がった。その後、5万人規模のユーザー調査を実施し、現状いかなるサービスが求められ、どのサービスは必要でないのかを徹底的に調べたという。そのうえでグループインタビューをしてユーザーの求めているサービスを分析した。

 結果、「いまのユーザーは、うその情報に敏感で、下心のある情報提供などを嫌がることなどが判明してきた」。これを受けて社内では携帯ユーザーに対して「隠さない、迷わせない、押し付けない」という3原則を立て、この原則に当てはめながらシンプルな新プランの開発作業を進めたという。

 価格設定は「どの程度値下げしたのかは説明できないものの、相当チャレンジングな価格になっている。『アハモ』のプロジェクトは若者層を取り込みたいドコモ社内の声から始まったもので、国からの要請ではない。2980円の価格を決めた時は社内上層部から『本当にこの価格でやっていけるのか』と心配されたほどで、われわれに対する値下げプレッシャーはなかった」と強調した。

 一方で、新プランではユーザー1人当たりの単価は下がるため、契約者が増えてくれなければ収入は増えてこない。その意味では負けが許されない新プランといえる。さらに、サービス終了が間もないフィーチャーフォンを使用している3GのFOMA世代加入者1000万人が機種を切り替える時期が到来する。切り替え時は他社に流出するリスクも高まる。「アハモ」で若者世代を取り込んだ後に、このガラケー世代をドコモにとどまらせるための策も求められる。

phot 高山賢人氏 2016年NTTドコモ入社。dポイント/d払いなどのアライアンス推進に携わった後、19年よりマーケティング部にて、料金プランの市場調査やプラン設計を担当

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.