「日本社会が変わったように世界に見せるにはやっぱ女性を会長に立てないとダメだろ」「いやいや、そんなお飾りのような発想で女性を担ぎ上げたら、それこそ性差別だ」「実力があれば男でも高齢者でもいいのでは」――。
迷走するオリパラ組織委員会の会長人事の議論が盛り上がるなかで、民間企業では着々と女性の経営参画が進んでいる。不二家が女優の酒井美紀さんを社外取締役に大抜てきしたのだ。同社広報によれば昨年、70周年アンバサダーに就任した経験と、主婦の目線で経営に助言を行ってもらいたい、ということで今回の運びになったという。
酒井さんのようなケースはややレアだが、実は今、女性社外取締役は右肩あがりで増えている。コーポレートガバナンスのコンサルティングを手掛けるプロネッドが、上場企業2168社を対象に調べたところ、女性社外取締役を選任している企業が927社となり全体の約4割を占めている(2020年7月1日時点)。19年からは約2割増えて、11年と比べるとなんと15倍と右肩あがりで増えていて、ダイバーシティ(多様性)が急速に進んでいるという。
と聞くと、「マスコミは森さんの発言を切り取って大騒ぎをするのではなく、こういう日本の取り組みも世界に発信すべきだ」と感じる人も多いかもしれない。ただ、残念ながらそれはやめておいたほうがいい。実は日本の場合、女性社外取締役が右肩あがりで増えれば増えるほど、男女格差が広がっているという皮肉な現実があるのだ。
2011年に発表された、世界経済フォーラムの「The Global Gender Gap Report 2011」によれば、男女格差を測るジェンダーギャップ指数で、日本は135カ国中98位。では、そこから女性社外取締役が15倍になった20年にどうなったかというと、153カ国中121位。調査参加国が18カ国増えて、23位もランクを落としている。後から加わった途上国などにも追い抜かされ、「後退」しているような状況なのだ。
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