よくよく読んでみると、実は森氏は、女性は能力が劣っているとか、女性の発言を制限しろなんて「ストレートな差別発言」をしていない。そのため、一部の人たちは「マスコミの切り取りだ」「森氏はハメられた」と擁護(ようご)しているわけだが、日本よりもジェンダーギャップの少ない国の人たちが、この「全文」を読んでもそういう反応にはならない。むしろ、「うわあ、日本のおじさんたちの感覚ではこれがセーフなのか」とドン引きされる。
ラグビー協会の理事会の時間がかかる問題について、「競争意識の強い女性」だけがスケープゴートにされているからだ。
要点をまとめないでダラダラ話したり、議事進行を無視した演説スタイルで意見を述べるのは、男も女も関係ない。実際、森氏自身もこの発言をしたJOC評議会で、最後に軽くあいさつを振られただけなのに、40分間もダラダラと話続けている。
しかし、森氏はそういう「個人」の問題ではなく「女性」の問題にしてしまった。ラグビー協会の会長以下、19人の男性はみな話は長くなく、組織委員会の女性理事も、「競争意識が強い」という自らの立場を「わきまえている」のでいいとして、ラグビー協会の5人は「女性だから話が長い」という。組織運営の問題点を説明するのに「女性」を利用しているのだ。日本人の感覚だと「まあ女性って、そういうところあるよね」とスルーできるかもしれないが、日本より男女格差の少ない国では完全にアウトだ。
「森氏は、ラグビーのような男のスポーツの協会に、女性だからという理由だけで女性理事を増やせと文科省がうるさく言ってくる状況に問題提起をしただけだ」みたいなことを言って庇(かば)う有識者もいたが、もし本気でそんなことを主張したら間違いなく世界から「女性蔑視の国」のレッテルを貼られてしまう。ラグビー協会の女性理事は、元女子ラグビーの選手で7人制女子ラグビー日本代表ヘッドコーチなどを務めた浅見敬子氏など各分野の専門家なのだ。「どうせ女には小難しい話は分からないんだから、男に任せておけばいい」と言う国には、そもそも五輪を開催する資格などない。
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