ビットコインのファンダメンタルズとは何か? ARKレポートから読み解く(1/4 ページ)

» 2021年03月02日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 この1年で540%もの価格上昇を見せたビットコイン。米国企業や機関投資家が買っているともいわれ、新たな資産として見られることも増えてきた。しかし、ビットコインについてまわるのが「本質的な価値がない」という言葉だ。

 株式などの資産については、企業収益などがファンダメンタルズ(基礎的事項)と呼ばれ、それを分析することで今後の株価動向を説明できるとされている。では、ビットコインのファンダメンタルズとは何か?

 ハイテク株への投資で昨今人気の米投資ファンド「アーク・インベストメント・マネジメント・エルエルシー(アーク社)」が公開した年次レポート「BIG IDEAS 2021」を元に読み解く。解説は、アーク社の分析を元にした国内向け投資信託を提供している、日興アセットマネジメントアメリカズ・インクの千葉直史氏。

ビットコインの保有期間

 ビットコインのファンダメンタルズを見る上で、まず重要なのが保有者の保有期間だ。ビットコインの運用が始まった2009年以降、実質的に取引が可能になった11年間について、保有期間をまとめたのが次の図だ。

ビットコイン保有期間ごとに、全体の割合の推移を示したチャート(アーク)

 図の黒い部分は5年以上の長期にわたって保有されているビットコインの比率を表している。現時点で約2割が「ずっと動いていない」ビットコインであり、創始者であるサトシ・ナカモトの保有部分のほか、送金ミスや秘密鍵の消失などで、永久に失われたものが含まれると考えられる。

 注目なのは、保有期間1年未満の「短いビットコイン」だ。千葉氏は、「市場が動くと、短いビットコインの量が増える。新規参入が増えるので、短い期間で回転するビットコインが増える」と説明する。確かに、17年末の仮想通貨バブルのタイミングで短期間保有の比率が上昇し、保有1年以内の比率が過半まで増えていることが分かる。

 逆に価格が下落する弱気相場では、「その人達が諦めて手放して、我慢強い人がそれを買ってきた」(千葉氏)ということも分かる。一方で、20年の価格上昇では短期保有者の割合が増加していない。これは新たに仮想通貨を購入した人が増えたというよりも、従前からの保有者が持ち分を増やした流れにあったということが分かる。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.