テレワークで東京を脱出、都心を離れて地方移住すべきか本質を見極めて(2/3 ページ)

» 2021年03月20日 08時00分 公開
[猪口真INSIGHT NOW!]
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 こうした動きを見れば、どちらかといえば、仕事にも資金にも余裕のある方たちが、郊外のゆったりとした住まいを購入したり、借りたりしているのだろう。

 その証拠といえるかどうかは別として、テレワークを実施している人は、高収入の人が多い。ある調査によれば、東京23区内のテレワーク実施率のほうが地方に比べると3倍近く、年収別で見た場合、1000万以上は半数以上で、300万円未満は1割ちょっとだという。完全に収入とテレワークの実施率は比例しているといえそうだ。

 つまり、テレワークがどうのこうのという議論は、都会で高収入が条件ということなのだろう。どういうことかといえば、儲かっている企業(大企業を中心とした年収の高い企業、そしてその企業にお勤めの方々)ほど、テレワークを導入しているということだ。

 テレワークの条件は、ICTシステムの導入やら、多彩な働き方改革の土壌やら、柔軟な人事システム・業務プロセスやら言われることも多いし、もちろんそうした要素もあるとは思うが、もっとも大きいのはその企業において、バリューチェーンがどれだけ盤石かによるところのほうが大きいのではないか。

 テレワークの問題として、上司への報告や事案に対する意思決定、コミュニケーションの不足による仕事の停滞などを挙げる人は多いが、すでに確固たるバリューチェーンができていて、状況に応じた意思決定が常に行われているのであれば、オフィスワークであろうがテレワークであろうが、仕事のプロセスとしては大きな問題はない。しかるべき人がしかるべきときに意思決定を行うシステムができているからだ。

 多くの中小企業や小規模事業者は、バリューチェーンはあるものの、その場対応の的確な意思決定や例外的で臨機応変な業務が必要なケースが多く、テレワークの場合、そこに問題が出ることのほうが多い。

 また、オンラインミーティングとひとことで言っても簡単ではない。人がひしめく多くの中小企業おオフィスで、それぞれのメンバーがそれぞれにオンラインミーティングを行うには、かなり難しいものがある。デスクにてフリーに声が出せる環境のオフィスであれば問題ないが、デスク上でのオンラインミーティングはまず不可能だろう。基本ミュートにしておかないとオンラインミーティングはできないし、そういうミーティングで何かが生まれるとは思いにくい。

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