この食の砂漠問題について、NGAは次のように述べています。
「農村部や都心部では、スーパーマーケットにアクセスできない、いわゆる食の砂漠と呼ばれる地域があり、パンデミックが起こるずっと前から、独立系スーパーに不利な市場構造の影響を受けていました。つまり、大手の激安小売チェーン店が、市場での影響力を利用して低所得者層に合わせた商品の供給を独占的に確保してきたことで、一部の地域では独立系スーパーマーケットが淘汰され、そのような地域は、新鮮で健康的な商品を手に入れることができなくなる食の砂漠になってしまったのです」
またNGAは、連邦取引委員会、司法省、各州の検事総長に対し、食料品のパワーバイヤーとサプライヤー間の取り決めを調査するよう要求。「支配的な大手小売業者の市場優位性」が、価格設定や取引条件、商品供給の差をもたらし、独立系スーパーマーケットを不利な立場に追いやっていないかを、調査・判断するよう求めました。
バイデン政権になりGAFAをはじめとする巨大IT企業に対するさまざまな規制強化が始まろうとしていますが、この波がリテール業界にも影響を及ぼすかもしれません。
NGA会長兼CEOのフェラーラ氏は、「議会と連邦政府が独占禁止法の原則を再確認し、全ての米国人が依存している業界(食品)との競争を回復できるようにする時が来た」と述べ 「独占禁止法は単なるビッグテックだけの問題ではない」と宣言しました。
パンデミックをきっかけに、より明確になった「大きいものはより大きくなり、小さいものは淘汰される」という米国のリテール業界の競争ルール。食の砂漠問題や独占禁止法の問題と共に議論がされるようになれば、業界の構図も少しずつ変化し始めるかもしれません。
パロアルトインサイトCEO/AIビジネスデザイナー
2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科客員教授(AI企業戦略)を務める。毎日新聞「石角友愛のシリコンバレー通信」など大手メディアでの寄稿連載を多く持ち最新のIT業界に関する情報を発信している。
著書に2021年4月発売予定の『いまこそ知りたいDX戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、2021年3月発売の『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
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