“非効率”なブライダル企業が、コロナ禍でもいち早く黒字化できそうな理由結婚式が激減(4/4 ページ)

» 2021年04月13日 05時00分 公開
[小島一郎ITmedia]
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非効率だから需要減でも対応できる

 あえて効率性を犠牲にするモデルを構築することで、他社がマネできない強さを手に入れる。そういった企業が、しぶとく利益を出していく現象は、これから起きてくるだろう。

 新型コロナの影響で、結婚式を仕方なく延期しているカップルはたくさんいる。コロナ収束後に“挙式ラッシュ”が起きて、ウェディング業界に活況をもたらすことになるだろう。

 しかし、長い目で見ると、国内のウェディング業界が厳しい事業環境に直面するのは間違いない。少子化が定着してしまった日本においては、結婚適齢期とされる人口が減少していく。婚姻数が減り、結婚式を挙げる需要自体が減少してしまうからだ。矢野経済研究所が20年7月に発表した「ブライダル市場に関する調査」によると、14年の市場規模は2兆5649億円だったが、18年には2兆3870億円にまで縮小している。同研究所は、その背景として、婚姻件数減少、なし婚(結婚式をしない)層の増加、披露宴の少人数化に伴う組単価の低下などを挙げている。そして、今後もブライダル関連分野への支出低下が懸念されるとしている。

ブライダル市場の推移(出所:矢野経済研究所公式Webサイト)

 今後、複数の挙式を行うことを前提とした店舗設備を保有しているウェディング企業にとっては、その効率性を維持するハードルが高まっていってしまう。

 人口減少に伴って、国内でさまざまな需要が減少する未来においては、“量をさばく”ことで経営効率を高めるモデルのほうが非効率になってくるだろう。

 ブラスは、社歴が長くないため競合大手と比べて社員も若い。このため、経験やスキル面で競争力向上に課題はあるだろう。しかし、挙式需要が減ってしまう未来においては、“非効率”を付加価値に変えるブラスの戦略は、競争力をもたらす可能性がある。

 ウェディング業界に限らず、他の業界においても“非効率”を弱点でなく強みにできる企業は要注目だ。

著者プロフィール

小島一郎

株式会社分析広報研究所 チーフアナリスト・代表取締役

 年間1000社の上場企業への継続的なリサーチ活動を行っているアナリスト。独自リサーチを基盤に、企業に対して広報や企業価値向上施策に関するコンサルティングを行っている。

 1997年上智大学経済学部卒。入社した山一證券で山一証券経済研究所企業調査部に配属されるも破綻を経験。日本マイクロソフトを経て、大和総研企業調査部にて証券アナリストを行う。日経金融新聞(現日経ベリタス)、エコノミスト誌の人気アナリストランキングに名を連ねた。その後、事業会社に転身、上場物流不動産会社、上場ゲーム会社、上場ネットサービス会社で広報IRや経営企画に携わる。2012年独立。リサーチアナリストや事業会社での実務経験を生かして、企業価値向上を戦略面、広報実務面でサポートする株式分析広報研究所を設立し現在に至る。企業価値向上の実績を積み上げている。

 アナリスト、コンサルタントとしてビジネス媒体中心に記事執筆。全国紙、地上波等でのコメント紹介多数。リサーチの現場からもつぶやいている


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