中小企業にお勤めした方ならば分かるだろうが、会社の規模的にもオフィスもそれほど「密」ではないので、ぶっちゃけそこまで在宅にこだわる必要もない。また、社員の顔もほとんど知っているので、何か用があれば携帯で話せば事足りる。つまり、わざわざシステムを導入して、使い方やらを習得してテレビ会議で話をするよりも、同僚と連絡を取り合ってサクッと出社して仕事をしたほうが「めんどくさくない」のだ。
実際、中小企業白書のなかでテレワーク未導入の企業に「テレワークを導入しない理由」と質問をしたところ、71.6%でダントツに多いのが、「テレワークに適した仕事がないから」という回答だった。
規模の小さな会社で働く人にとって、このようにテレワークに魅力がないどころか、足を引っ張っている印象を抱く人もいる。
野村総合研究所が2020年7月、日本、米国、英国、ドイツ、イタリア、スウェーデン、中国、韓国の8カ国を対象にした調査「新型コロナウイルスと世界8カ国におけるテレワーク利用」に、興味深い結果が掲載されていた。
テレワーク利用者に主観的な生産性変化を尋ねたところ、「かなり落ちた」「やや落ちた」と回答をしたのが48%で日本が一番多かった。また、将来的なテレワーク利用意向を質問したところ、「自分の仕事はテレワークができない」と言い切った割合が、米国(26%)、中国(24%)、英国(32%)のなかで、日本は45%とダントツだった。
これらの8カ国のなかでも、日本は中小零細企業で働く人の比率が高い。それは裏を返せば、諸外国で普及しつつあるテレワークは、中小零細企業にとって魅力的ではないのだ。メリットをそれほど感じられない、コロナ禍で苦しい戦いを強いられている、そんな状況のなかでどれだけの企業が導入して、続けていくのか。
このように「テレワークに向かない会社」が日本では99%を占めており、全労働者の7割にあたる2784万人が働いている。つまり、緊急事態宣言下で、朝の通勤ラッシュが大混雑になるのは、通勤する人たちの気が緩んでいるとか、コロナをナメているとかではなく、「テレワークに向かない産業構造」によるところが大きいのだ。
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