「緊急事態宣言下に通勤する人」を叩いても、テレワークが普及しない根本的な理由スピン経済の歩き方(2/5 ページ)

» 2021年04月28日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

日本の産業構造が原因

 筆者は昨年から『テレワークの「リバウンド」はなぜ起きる? 「意識が低い」で片付けられない構造的な問題』(2020年7月14日)、『「出勤者7割削減」なんて無理な呼びかけは、やめたほうがいい理由』(2021年1月26日)などの記事のなかで繰り返し述べてきたが、コロナという非常事態にもかかわらず、日本でテレワークがなかなか普及しないのは、「IT導入が遅れている」とか「経営者の意識が低い」からではない。

 「中小零細企業で働く労働者が圧倒的に多い」という日本特有の産業構造が原因だ。

日本でテレワークがなかなか普及しない背景は?(出典:ゲッティイメージズ)

 この産業構造については、「ビジネスパーソンとしての偏差値があるなら、自分はどのへんか」なんてビジネマン向けのスコア診断まで提供し始めた日本経済新聞も以下のように指摘している。

 『企業全体のうち中小企業が圧倒的な割合を占めるのが日本の産業構造の特徴だ。2016年の経済センサス活動調査によると、個人事業主を含む中小企業は企業数で全体の99.7%、従業員数で68.8%を占める。中小企業の経営状況の悪化は日本経済に直結する』(2020年5月20日)

 では、このような日本特有の産業構造のなかで、果たしてテレワークというニューノーマルとやらが本当に定着するのかを考えていただきたい。

 『中小企業白書2020』の「資本規模別、テレワークの導入状況」というグラフを見ると、テレワーク導入率と会社の資本金規模はきれいに比例している。1000万円未満企業でテレワーク導入はわずか11.5%、5億円〜10億円未満企業(30%)は3分の1、50億円以上企業(52.3%)は2分の1という状況だ。

 つまり、会社の規模が小さくなればなるほどテレワークと縁遠くなっていく現実があるのだ。

 「それは設備投資の余裕がないから」ということで、政府が助成金や補助金をバラまいているが、テレワークが定着していないことからも分かるように、「カネ」だけが問題ではない。そもそも小さな会社はテレワークに魅力を感じていないことがあるのだ。

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