予約数は20万個以上 なぜモスバーガーは「月2回、金曜限定」の食パンを販売するのかバーガーだけじゃない(3/3 ページ)

» 2021年05月10日 12時30分 公開
[上間貴大ITmedia]
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予約ついでに他の商品を購入する客も

 いくつかのコラボ商品の展開や物販の強化を進めてきたが、食パンの販売については当初、社内でも驚きの声があったという。吉野氏は「店舗で予約を受け付けて、月2回だけ販売するという方法は、通常の物販商品や新商品の販売方法とは毛色が違う。それをどうオペレーションするか、社内で調整し、店舗への説明に時間をかけた」と振り返る。

現在までに約20万個以上の予約が

 発売前から話題となったこともあり、現在までに約20万個以上の予約が入った。また副次的な効果として、食パンを予約するために近隣店舗を調べることで幅広い層に存在を知ってもらったり、他の商品を一緒に購入したりする動きもあるという。

パン市場は今後も微増に推移 

 高級食パンの登場や消費者の嗜好(しこう)が変化したことで、国内のパン市場全体が伸びている。

 矢野経済研究所は、20年度の国内パン市場規模を前年度比96.7%の1兆5262億円と見込む。コロナ禍による店舗の休業や営業時間の短縮などが影響したためだ。その一方、高付加価値商品やヒット商品の発売、食事系パンの夕食需要拡大など、市場拡大要素も存在するとして今後も微増に推移する見込みと指摘。24年度には1兆6225億円規模になると予測している。

24年度には国内のパン市場は1兆6225億円規模(出典:矢野経済研究所)

 その高級食パンブームの先駆けともいえるのが「乃が美」(大阪市)だ。13年に大阪で誕生した乃が美は、現在47都道府県全てで出店。同店が展開する「生食パン」は、レギュラー(2斤)で864円、ハーフ(1斤)432円という価格設定だが、多い日には全国で1日に8万本以上売れているという。

 俺の株式会社(東京都中央区)が展開する「俺のBakery」では、「銀座の食パン〜香(かおり)〜」(1本1000円)、「銀座の食パン〜和(なごみ)〜」(800円)、「山型の食パン」(900円)と複数の高級食パンを展開。またファミリーマートとコラボし、同社が監修した「俺のBakery監修 究極のしっとりもっちり食パン」を20年11月から全国のファミマで展開。セブン-イレブン・ジャパンが13年から展開する「金の食パン」も何度かのリニューアルを経て、今では定番商品になっている。

「俺のBakery」はファミマとコラボ(出所:プレスリリース)

 専門店からコンビニまで、高級食パン市場は拡大しているが、吉野氏は「食パンで売り上げを作っていこうという考えではない」とし「物販を強化する中で、何が喜んでもらえるかリサーチしている段階」だと説明する。

 モスバーガーの既存店売上高は20カ月連続で前年同月を上回っている。20年7月には、累計で12億8900万個を売り上げた看板商品「モスバーガー」をリニューアル。また「とびきり赤ワイン&ビネガー 国産燻(いぶ)し豚ロースとチーズ」や「獺祭(だっさい)」の甘酒を使用した「まぜるシェイク 獺祭」といった期間限定商品を発売するなど、新たな取り組みを促進。自粛期間中の「ぜいたくを味わいたい」といった需要や、「シェイクと日本酒」という意外な組み合わせがSNSなどで注目を集め、いずれも人気を博した。

 ニーズをうまく押さえ、コロナ禍でも好調な同社。吉野氏は、新たな挑戦に向け「『モスバーガーといえば○○』ということだけではなく、より身近に感じていただけるようモスバーガーのさまざまな利用シーンを提供していきたい」と力を込める。

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