不正会計や利益のかさ上げがあった東芝では、現場の社員たちに到達不可能なほど過剰なノルマを押し付けていたが、パワハラにならぬよう「チャレンジ」などと呼んでゴマかしていた。営業マンが「ビルから飛び降りろ」「お前の家族皆殺しにしてやる」などと上司から恫喝をされていたことが判明したスルガ銀行でも、通常の収益目標とは別に過大な「ストレッチ目標」が課せられていた。
つまり、「現実と乖離(かいり)したムチャな数値目標」を現場に押し付ける動きは、日本の組織全体に見られる普遍的な現象なのだ。
「確かにウチの会社も達成できそうもない目標を掲げているから、いつもボーナスが満額出ないよ」なんてボヤく声が聞こえてきそうだが、それを裏付けるような調査もある。
19年にアタックス・セールス・アソシエイツが、民間企業の営業従事者3360人を対象に調査をしたところ、「昨年度、数値目標を達成したか?」という質問に対して、「いいえ」と答えた人は46.1%もいた。見方によっては、日本のサラリーマンは半数しか達成できないような「ムチャな目標」を課せられているとも言えるのだ。
では、なぜこんなブラックな目標設定が常識になってしまったのか。バリバリの営業マンの皆さんからは、「なに甘っちょろいこと言ってんだ、仕事ってのはそういうもんだろ」という意見が多いだろう。
仕事の多く、特に営業や販売などの場合、「厳しいノルマ」が課せられることが多い。実力に見合った「優しいノルマ」だと、その人は実力程度か実力以下の結果しか出せないことが多い。そのため、努力をして少し背伸びをしないと届かないような「高めの目標設定」をする手法がよく使われる。先ほども出てきた「ストレッチ目標」というやつだ。
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