攻める総務

リーガルテック導入、部門をまたぐ調整は? グローバル企業の法務に聞く事例「勝機はスモールスタートにあり」(2/5 ページ)

» 2021年06月03日 07時00分 公開
[BUSINESS LAWYERS]

──法務組織の構成や特徴についても教えてください。

飯田氏: 国内で30人弱のメンバーがいますが、そのうち外国籍のメンバーが2人おり、男女比としては男性対女性でおおよそ2:1の割合です。また日揮グローバルには米国法弁護士、英国法弁護士が1人ずつ所属していますが、メインがグローバル事業ということもあり、グループ全体で日本の弁護士資格を持つメンバーは所属していません。

 他方、日揮による国内事業のプレゼンスも上がるなか、国内の法務リスクに対応する局面も増えてきますので、今後は国内資格をお持ちの方に参画いただくことも考える必要があると思っています。

──コロナ禍による法務業務への影響はありましたか。

飯田氏: 直接影響が出ているのは契約交渉です。基本的に海外のプロジェクトは現地で入札が行われるので、その国または、お客さまのインベスターの所在地で投資判断がなされます。これまでは現地へ行って交渉を行っていましたが、出張ができなくなったため、今はみなWebで実施しています。また、海外プロジェクトに関わる裁判・仲裁、その準備においても、Webのテクノロジーを使った手続きがスタンダードになってきており、今後の可能性を実感しています。

 コロナ禍によりEPC遂行に影響が出ているプロジェクトもあります。多くの契約にはプロジェクトの遅れに対して損害賠償金が課されるような条項が存在するため、納期・契約金額の調整交渉を行ううえで、法務の観点からサポートしています。

──グローバルに事業を展開されるなかで、国内を含め各国の現場部門とはどのように関わられていますか。また事業部から意見を吸い上げるためのノウハウがあれば教えてください。

飯田氏: 当社では、平均4〜5年を要するプロジェクトの遂行中、契約締結時の担当者が常にフォローしていますので、問題が発生した際は、まずその担当者に相談があがってきます。

 また各プロジェクトでコロナ禍による影響も生じていますので、それぞれの状況を知らせてもらったうえで、法務に限らずグループで統一的に対策を練るような体制を取っています。

中島氏: コンプライアンスの観点からいうと、特に海外の建設現場は、贈収賄のリスクが高いという認識を持っています。そうしたコンプライアンスリスクに対し、基本的にはプロジェクトごとに責任者を選任しています。現場の方が相談しやすいよう、責任者が赴任する前に、面談により顔合わせと研修を行っています。相談事や問題が生じた際には、その責任者が本社のコンプライアンスチームとの間の連絡窓口の役割を果たします。

加瀬氏: 私は現在、海外のプロジェクトの建設現場で契約業務を担当していますが、現場では「プロジェクト関係者が考えていることをどう契約に合致した形で実行できるか」「問題が起こったときにどう契約に落とし込んで解決できるか」といったように、法務というよりは事業寄りの考え方に主眼を置いて仕事をしています。本社で法務を担当していたときには、プロジェクトの方々とは少し距離があるように感じていましたが、今は自分のなかで法務と事業が完全に交わったような感覚があります。

photo 日揮グループの海外プロジェクト現場

2.スモールスタートを念頭に、SaaS型のリーガルテックを導入

──日揮グループ全体として、テクノロジーに対してどのようなお考えをお持ちでしょうか。

伊與部氏: 日揮グループのIT戦略を示した「ITグランドプラン2030」を2018年に発表し、そこに向けた取り組みを進めているところです。ITグランドプランは、われわれのメインビジネスであるEPC事業において、デジタルの力を活用して工数削減・納期短縮などを実現することで、競争力の創出を目指すものです。

──法務部門内ではどのようなリーガルテックを活用されていますか。

伊與部氏: リーガルテックに関してはこれまで定期的に情報収集を続けてきましたが、リーガルテック業界、特に自然言語処理の技術がどんどん高まってきている様子を見て、まずは契約書レビュー支援ソフトウェアのLegalForceを昨年導入しました。また電子契約サービスのクラウドサインも導入しています。

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